⑨膨らむ借金「怖い」 揺れる心で退学届


この記事を書いた人 外間 聡子
日本学生支援機構から届いた奨学金返済の振込用紙。借用金額は大学2年までの2年間で192万円となった=沖縄本島(写真は一部加工しています)

 女性(22)は昨年2月、休学中の大学を辞めるか続けるか悩んでいた。アパートで1人暮らし。実家は大学から約40キロ離れた所にあり、母子世帯の母親からは生活費の支援は得ず、月8万円の奨学金と、アルバイトの収入とで生活費と学費を自分で賄っていた。
 アルバイトは週に2、3回、ホテル宴会場での配膳の仕事だ。長時間の立ち仕事で宴会が延長されると帰りも遅くなる。県内各地のホテルに派遣されるため、北部のホテルに行くこともあった。
 帰宅後の深夜から宿題をしなければならないが、疲れて寝てしまうこともしばしば。テスト前に勉強してどうにかクリアする。勉強に集中することが難しかった。
 前期と後期の年に2回、学費を支払う時期が迫ると複数の短期のバイトを掛け持ちした。学費の支払い時期と試験が重なる時が最もつらかった。「お金に振り回されて勉強に身が入らないのは本末転倒ではないか。しっかり稼いでから大学に行こう」と思い、大学2年を終えた一昨年2月に休学手続きを取った。
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 「日本学生支援機構」(旧・日本育英会)から届いた請求書には、月々の支払額1万2859円、借入総額は192万円とある。大学2年終了時の金額だ。年率3%の上限利子が付く「第2種」の奨学金だ。
 女性は苦笑いしながら「奨学金という名の学生ローンですよね」と声のトーンを落とした。「まだ2年間だからこの金額で済んだと思う。4年間だったら卒業と同時に400万円近い借金は、ちょっと怖い」
 大学進学のきっかけは「教職課程もあるし、将来教師という選択肢もあるんじゃないか」と高校の先生に勧められたことだった。将来の目標が決まっていたわけではなかった。不合格だったら就職していただろう。高校から大学へ-というレールから外れることへの不安も多少あった。
 一方で大学生活への憧れもあった。大学でのサークル活動の楽しさも味わった。ただ学費の支払い、将来の奨学金の返済への不安はいつもどこかにあった。
 休学中、学生生活を振り返り「学ぶ目的は何なのか」と考えるようになった。「大学は手段で目的ではない」と感じ「大学が全てではない。同じお金をかけるなら、別の学び(選択肢)もあるかもしれない」と思うようになった。
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 復学したとしても奨学金は必要となる。返済金額は卒業時には約400万円に膨らむ。大学で学ぶことと奨学金の返済をてんびんに掛けた時、返済への不安がより大きかった。
 退学届を出すのにぎりぎりまで迷った。期限が迫った昨年2月、届けを出すために大学に着くと、たまたまお世話になっていた先生に会った。迷っていることを話すと「自信を持ちなさい。あなたなら大丈夫」と言われた。
 退学したとしても一定期間内であれば3年次に復学できる制度があると知った。そのことも背中を押した。担当部署に退学届を提出した。
 (子どもの貧困取材班)