有料

琉大病院、がん検査施設で10月以降の予約できず 関係者「運営面で不安定な事案が生じ」


琉大病院、がん検査施設で10月以降の予約できず 関係者「運営面で不安定な事案が生じ」 機能画像診断センターが保有するPET検査装置
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 琉球大学病院(西原町)の敷地内にある、がん検査施設の10月以降の受診予約ができなくなっていることが25日、複数の関係者への取材で分かった。関係者によると、同施設は同院内のほか本島中南部や宮古・八重山地域の医療機関を中心に全県から患者を受け入れてきたが、8月下旬ごろから影響が出ている。琉大病院は2024年3月末までに米軍西普天間住宅地区跡地(宜野湾市)への移転が予定されている。同施設は官民連携(PPP)による運営だが、琉大側は移転に伴う契約終了を共同運営する民間企業に既に通知しており、今後の施設存続が不透明な状況となっている。

 琉大病院を運営する琉大は本紙取材に対し「現在10月以降の予約を停止している」とした上で、「運営面で不安定な事案が生じている」と説明している。詳細は不明。

 関係者によると、10月以降の予約が取れなくなっているのは、琉大と民間企業が共同運営する「機能画像診断センター(FIMACC)」が実施するPET/CT(陽電子放射断層撮影)検査。がんの進行具合の見極めや早期発見に有効とされる精密検査で、この検査ができる県内の医療機関は琉大病院と豊崎クリニック(豊見城市)、ちばなクリニック(沖縄市)の計3カ所。

 豊崎クリニックの担当者は「9月に入ってからこれまで琉大病院で受けていた中部地区の病院からの検査予約の問い合わせが急増した。琉大病院の院内からも依頼がありパンク寸前だ」と話す。

 FIMACCのホームページによると、月平均250人の診療実績があり、13年度から22年度末までに累計2万4672件の検査を実施。このうち8007件が院外からの受け入れだった。

 琉大病院は、24年末までに宜野湾市の西普天間住宅地区跡地に同大医学部とともに移転予定で、これに伴い、琉大側が21年3月、FIMACCを共同運営する民間企業に契約解除を通知し、今後の対応を協議していた。

(安里洋輔)

琉大病院の移転・整備は振興策の目玉

 2015年に米軍から返還された西普天間住宅地区跡地への琉大病院・同大医学部の移転事業を中心とする「沖縄健康医療拠点」の整備は、安倍晋三政権下の14年、同跡地を駐留軍用地跡地利用推進特別措置法に基づく「拠点返還地」に初指定されるなど、官邸主導の沖縄振興策の目玉として進められてきた。


 新任の自見英子沖縄担当相は15日の就任後初会見で「今後の跡地利用のモデルケースとなる重要な事業だ。高度な医療、研究拠点の拡充や地域医療水準の向上、また、国際研究交流、医療人材の育成を目指す」と述べていた。

 政府も、24年度の予算編成や政策の指針となる「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太方針)」で来年度末までの完了を明記。24年度の沖縄予算の概算要求では、物価高騰などの影響を踏まえ、前年度当初予算から110億円増の253億円を求めていた。