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インボイス制度に電子帳簿保存法…県内企業、同時対応に追われ DX化で業務改善急ぐ


インボイス制度に電子帳簿保存法…県内企業、同時対応に追われ DX化で業務改善急ぐ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 10月から始まる消費税のインボイス(適格請求書)制度の導入に向けて、県内企業の経営者や経理担当者が対応を進めている。また、2022年1月に改正された「電子帳簿保存法」(電帳法)では、今年末までは請求書や領収書などの取引データの紙での保存が認められているが、24年1月からは原則としてデータ保存が義務化される。書類管理にかかる負担軽減が期待されるものの、インボイスと電帳法への同時対応に迫られており、県内企業から「早急な業務改革が必要だ」との声が上がっている。

 電帳法では、24年1月から法人、個人事業主にかかわらず、請求書や領収書などを紙で保存することが認められなくなる。

 データ保存の義務化に先立ち、マンションや商業施設などの建設、不動産管理などを営む大鏡建設(那覇市)は数年前から、全社的な業務改革としてDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を掲げ、請求書のデジタル化、ペーパーレス化に着手している。

 取引資料の紛失や、手入力による請求書の記載ミスがあった場合は再発行の手間もかかり、大きな業務負担になっていたが、請求書の発行だけでなく、受け取り、支払金額の通知など、請求業務全体をデータ化する電子請求書システムを導入。1カ月につき約50時間だった経理作業を約20時間に短縮、年間約150万円のコスト削減に成功した。

 現在は約8割の取引先が請求書をデジタル化しているが、残りの2割にも個別に対応していき、1年以内の完全電子化を目指している。同社の末吉茂春常務は「パソコンやタブレットで操作できるため現場にいながらの確認作業やリモートワークも可能になった」と話す。

 フルーツタルト専門店オハコルテなどを運営するチューイチョーク(那覇市)では、月に70件ほど届く取引先からの請求書を全て紙で出力した上でエクセルに打ち込み管理していたが、手入力によるミスの防止や印刷コスト削減のため、請求書作成ソフトを導入。今年6月から請求書のペーパーレス化を進めている。

 商品の材料として欠かせない果物などを仕入れる生産農家にはインボイスに対応していない免税事業者もいるため、請求書の番号を確認するなど個別に対応している。同社で経理を担当する仲本千夏さんは「新しい制度に対応するため、税理士に相談しながら空いた時間にネットなどで勉強している。できる限り業務をコンパクトにしてうまく対応していきたい」と述べた。

(普天間伊織)