「世替わりやっさぁ」 沖縄芝居の名優、八木政男さんと平良進さんが首里劇場を再訪 解体を前に思い出の場所語り合う


「世替わりやっさぁ」 沖縄芝居の名優、八木政男さんと平良進さんが首里劇場を再訪 解体を前に思い出の場所語り合う 観客席に座り、当時を懐かしむ八木政男さん(右)と平良進さん=28日、那覇市首里大中町の首里劇場(小川昌宏撮影)
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 10月16日から解体が始まる那覇市の首里劇場。この舞台に何度も立った沖縄芝居役者の八木政男さん(92)と平良進さん(88)が28日、解体されると聞いて劇場を再訪した。「憧れの場所だった」「役者を育ててくれた劇場だ」と思い出を語り合った。

 首里劇場の開館は1950年。こけら落としには八木さんの所属した劇団「大伸座(たいしんざ)」が出演した。「あきさみよー」。露天劇場でやることも多かった八木さんは、屋根付き2階建てで、花道が二つもある立派な首里劇場に驚いた。芝居で両方の花道に分かれて言い争ったり、群舞で両方の花道から登場したりと演出にも影響を与えた。

 平良さんは20代の頃、翁長小次郎一座で初めて首里劇場に出演した。「どの劇団もここでやりたがっていた」が、人気と実力のある劇団しか出られなかったという。「客席と舞台が近く、温かさがあった」

 八木さんにとって、首里劇場は長年連れ添った亡き妻清子さんと出会った思い出の場所でもある。

 八木さんが21歳ごろ、清子さんが18歳ごろのことだ。芝居の幕あいに清子さんが日舞を披露したという。「僕が三線で『勘太郎月夜唄』を弾いて、それに合わせて踊ったわけ。それから5~6年後に結婚したんだ」と八木さん。「昨夜、妻の写真に『明日は首里劇場に行ってくる』と話したよ」

 思い出の劇場はあとわずかで姿を消す。平良さんは「残っていたのが奇跡。昔を知る役者たちが亡くなっていく中、劇場もなくなるのはひつぎを見送るような気持ちだ」と寂しさを隠さない。八木さんは「世替わりやっさぁ。劇場には感謝しかない。ありがとう、お疲れさま」と力を込めた。

 (伊佐尚記)

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