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沖縄芝居、学園祭、成人映画…時代の証人で「ちょっと恥ずかしい」存在だった首里劇場、解体に惜しむ声


沖縄芝居、学園祭、成人映画…時代の証人で「ちょっと恥ずかしい」存在だった首里劇場、解体に惜しむ声 1960年代前後に撮影されたと思われる首里劇場(提供:金城政則さん)
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 1950年に開館し、芝居小屋の雰囲気が残る劇場・映画館として、唯一無二の存在だった首里劇場。首里劇場調査団副代表の平良竜次さん(48)は「歴史とつながることができる場として貴重だった」と話す。

 70年代から成人映画を中心に上映したが、それ以前には地域行事の会場としても使われ、時代によってさまざまな顔を持っていた。開館から73年。興行史と地域史の“証人”ともいえる建物は、もうすぐ姿を消す。

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 首里劇場のこけら落としには沖縄芝居の劇団「大伸座(たいしんざ)」が出演した。座員だった八木政男さん(92)は「普通は一つしかない花道が二つもあって感動した」と振り返る。解体に寂しさをこらえ「時代の流れだね…」とつぶやいた。

首里劇場の場所(地図)

 近年は趣のあるイベント会場としても重宝された。ミュージシャン奈須重樹さん(59)は2016年にライブをし、その様子が公開中の映画「一生売れない心の準備はできてるか」で記録されている。解体について「景色は変わっていくものだから仕方ない」と受け止めつつ、「金城政則館長が生きていた時にもっと行けばよかった」と惜しんだ。

 首里劇場調査団は、金城館長が亡くなった後、劇場の歴史的価値を後世に伝えようと有志が立ち上げた。代表の平良斗星(とうせい)さん(53)は、劇場のある首里大中町の出身だ。小学生の頃は平日は成人映画、土日は子ども向け映画が上映されていたという。「地元にとってちょっと恥ずかしい存在」とも感じていたが、かつて学園祭などにも使われていたことを知った。劇場の跡地利用は未定だが、同様に「地域や文化の拠点になればうれしい」と願った。

(伊佐尚記、田中芳、田吹遥子)

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