辺野古代執行訴訟 沖縄県側代理人の弁論要旨


辺野古代執行訴訟 沖縄県側代理人の弁論要旨 新基地建設が進む名護市辺野古地域=2022年8月2日、(金良孝矢撮影)
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 原告(国)の請求は代執行の要件をいずれも充足していないので請求は棄却されるべきだ。
 第一に、「法令違反」が明らかにされていないことについて。原告は被告(県)が承認しないことが埋立法の各規定に違反する法令違反があると主張するが、根拠としては是正の指示が適法とした最高裁判決を示すだけだ。同判決は埋立法上の要件充足性に一切触れなかった。代執行は都道府県知事に法定受託事務の法令違反があった時にされるため、原告は今回、埋立法の要件充足性について主張立証し、その違反を言わなければならない。同判決だけではそれを言ったことにはならない。地方自治法の構造上、是正の指示に応じないこと自体が法定受託事務の違反や国の関与権限発動の根拠になるものではない。


 第二に、「他の方法による是正が困難」でないことについて。原告はすでに地方自治法上の是正の指示などの他の手段を取っているため困難だと主張する。だが同法の法文上、他の方法について何も制限はされていない。本件では国が県との対話による解決の努力を全くしていないことに尽きる。本件は安全保障を巡る巨大な公共事業で、地域に与える影響は甚大だ。このような事業は地域の了解を得て協力しながら進められるものであって、そうでなければ実現するはずがない。国は丁寧に説明すると言いながら「辺野古唯一」を繰り返すだけだ。


 第三に、「著しく公益を侵害していることが明らか」と言えないことについて。原告は辺野古新基地建設の必要性のみが公益であるかのように主張する。しかし住民自治、団体自治の観点からも公益が考慮されるのは当然だ。その公益は沖縄の人々の民意であり、地域の公共的利害だ。知事は沖縄戦、占領時代の話をした。沖縄県民はなぜいつもこの話をするのか。それは県内の米軍基地は沖縄戦によって不当に造られ、それが是正されないまま拡大され、復帰によっても何の救済もなく続いてきたことへの怒りだ。その重みは他の公共的利害にもまして重いものであり、国に重大な責任を負わすものだと言える。原告は知事が国に従わないことを「異常な事務遂行だ」と非難するが、異常なのは県民の負担軽減と言って新基地建設を続ける(国の姿勢だ)。それに抗うことが「著しい公益侵害」と言えるのか。原告は普天間基地爆音訴訟での主張と今回の主張は矛盾がないと主張しているが、国は今まで普天間で何をしてきたか。全く役にも立たない騒音防止協定を形ばかり作って、これで対処している、これで受忍せよというのが国の意向だ。それを負担軽減と言って辺野古に移したいというのが公益に資するわけがない。