【一問一答】玉城知事「対話による協議こそ民主主義」 辺野古代執行訴訟後の記者会見


【一問一答】玉城知事「対話による協議こそ民主主義」 辺野古代執行訴訟後の記者会見 代執行訴訟の第1回口頭弁論を終えて報道陣の取材に応じる玉城デニー知事(左から2人目)=30日午後4時2分、県庁(小川昌宏撮影)
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 代執行訴訟弁論後の玉城デニー知事と報道陣の主なやり取りは次の通り。
 ―主張を十分伝えることができたか。
 「意見陳述では、国が代執行という国家権力で公益としての民意を踏みにじることをどうか容認されないように、そして双方の対話によって、辺野古新基地建設問題の解決の道を探るということが最善の方法であることを申し上げた」
 ―即日結審への受け止めは。
 「即日結審とはなったが、判決期日が言い渡されなかったことについては、それは裁判所もしっかりと内容を精査しようという考えではないかと受け止めている」
 ―国側は普天間爆音訴訟との関係で(主張に)矛盾がないと述べた。
 「訴訟で従来求められてきているものの根本的な解決は何なのかということは、本来、国が責任を持って考えるべきであろうと思うが、それを放置しているということに他ならない。私はそこにもまた不条理があるのではないかというように、正直言って受け止めている」


 ―県側の主張が従来とは異なり、法律論よりも民意の訴えを重視している。
 「(県の)考え方については(代理人の)加藤裕弁護士からちゃんとお伝えした。私は県知事として、地方自治を預かる立場から、やはり国が誠意を持って解決するための手段とはどういうものであるか、それを県民はどう期待してるかということについて、はっきりと主張したと考えている」
 ―代執行訴訟で敗訴した場合、承認するのか、それとも拒み続けるか。 「判決が申し渡されてから検討したい。今の段階では答えは控えたい」 ―辺野古を巡り、現時点は闘いの中での一つのポイントと捉えるか、それとも終盤に差し掛かってしまっているとの感覚か。
 「今回の代執行訴訟は、いわゆる地方分権一括法が改正されて以降の非常に大きな司法の考え方が示される、大きな関心を集める訴訟だと考えている」
 「他方でこれからも難工事は続いていく。それによって環境への著しい変化が生じた場合にはそれをまた精査し、事前の評価の想定を超えた状況になるかもしれないと十分予想される。これからもその状況を止めなければならないという判断をわれわれもしなければならないかもしれないということも、きょう申し上げた。それによって対応が延びることで、普天間の危険性除去から遠のくことにも懸念を示した。そのようなことが容易に予想される難工事が、たとえこの埋め立て変更承認申請が承認されて工事が始まっても、この先も全く見通せない工事になるだろうというのが私たちの予測だ」


 ―歴代では大田昌秀、翁長雄志両知事が法廷で意見陳述した。沖縄県知事が国と争い、法廷で自ら意見を言い続けなければいけない現状と経緯をどう考えるか。
 「この中で一番政府が誠意をもって県と対話による協議で解決を図ろうとしたのは橋本政権のころだと思う。大田知事もさまざまな基地問題を解決するための対案を引き出して、最終的には承認(応諾)するという形になった。けれども翁長知事および私の時には、そのような問題を解決しようという姿勢での対話協議を(政府が)しているということはないのではないか。そのような姿勢で問題解決に当たろうとしない政府の姿勢が、多くの県民、国民からの不満と強い憤りにつながっている。そのことを考えると、私が法廷に立って堂々と、県民の思いや県がこれまで対応せざるをえなかった、特に基地問題への考えをしっかりと主張しなければいけないと受け止めている」


 ―基地問題を巡って、地方自治にどのような危機感を持ち、問題点があると考えているか。
 「基地問題への危機感はもちろん、県民が平穏な生活環境の中で暮らせることが当たり前であってほしい。その大きな阻害要因が沖縄における70・3%もの米軍専用施設および、それら基地がもたらすさまざまな実害だ。取り除くには政府の側にも大きな責任があり、われわれは県民に対して解決するために対話を求めていく責任も示していかないといけないと思う」
 「この問題は沖縄だけでなく全国、全国民の問題だということを繰り返し、トークキャラバンやSNS発信などを通じ、国民に自分事として考えてもらわなければならない重要な問題だということも申し上げ続けていかなければならないと思う」


 ―地方自治がどう踏みにじられているのか。
 「憲法で定める地方自治の本旨。地方が国と対等に、独立した考え方で住民の意思によって行政を執行しなければならないということからすると、容易に国が手を出して踏みにじってはならないと厳格に示されている。今回の司法の判断も、そのような憲法の地方自治の本旨に即した判断をしていただきたいと期待を申し上げた」


 ―問題を解決しようとする政府の姿勢がないと主張したが、なぜそう変化したと考えるか。
 「おそらく第二次安倍政権が誕生して以降、辺野古が唯一の解決策という政治的な決着を決めてしまった。つまりこの工事が、今、設計変更承認申請において、非常に難解な土木工事が伴うということがはっきりしたにも関わらず、辺野古が唯一の解決策という答えだけを実現させようとする姿勢に、政府がもはや対話の余地はないというような姿勢で示しているものが如実に表れていると思う。そのことにとらわれ続けている限り、私は、それでは政府に対してそれでは解決しません、対話による協議こそが民主主義の正当な手続きであり、解決に向けた新しい考え方を互いに協議していかなければならないのではないかということが肝要だと言い続けないといけないと考えている」


 ―今後、具体的に政府に対話を求める予定はあるか。
 「法的手続きはもちろんだが、いろいろな場面で対話、協議が必要なことはたくさん出てくる。辺野古に限らず、環境の問題しかり、社会的な貧困の状況を解決する場合などで必要な対話は講じられるべきだと考えている。その折々にしっかりと求めていきたいと思うし、実際に協議をして、物事がうまく解決できる方向に双方が協力して取り組んでいければと期待している」
 ―辺野古の埋め立て阻止に向けた法廷外での取り組みは。
 「この間、県外のさまざまな団体や個人の方々から、『今の政府のやり方は認められない』『私たちも地元で知事を支えるために活動したい』との声がたくさん寄せられている。多くの方々に今の政府の姿勢について、代執行訴訟を取り下げて対話による解決を模索してほしいということも期待をしていると思う。これからも、国民の方々が自分事として受け止め、『自分が何ができるのか』ということを考え、行動していただくことを期待して発信したい」


 ―大田知事は対話に応じるに当たって承認を決断した。対話を求めるに当たっての妥協点はあるか。
 「大田知事の場合も、承認ありきで対話をはじめたのではないはずだ。その対話をする中から、県が求めるさまざまな条件に対して、政府がはっきりとアメリカと協議すると約束し、SACO合意の進展につながった経緯がある。われわれからあくまでも対案を用意しなければ、対話にならないわけではないと思う。対話によって政府に何ができるか、われわれに何ができるのかを胸襟を開いて話し合わないと本当の意味での対話にならない」
 「今は政府がとにかく対話に応じるという姿勢を示し、そのために既存の会議体を使うのか、それとも新たな会議体を作るのかについても真摯(しんし)に話し合いを始めれば、必ず解決のための道筋につながると考える」
 ―知事自ら対話の機会をつくる考えはあるか。
 「私はいつでも対話に応じる。いつでもそのように対話する機会は待っているし、これからも呼びかけ続けていきたい」