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「献体」希望増加で登録制限 琉大医学部の実習使用 かつては不足も近年は100~200件の登録数


「献体」希望増加で登録制限 琉大医学部の実習使用 かつては不足も近年は100~200件の登録数 琉大医学部の献体慰霊祭=琉大体育館(1987年撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉陽 拓也

 医学研究や医学生の教育に貢献するため、死亡後に自らの体を提供する「献体」希望が増加し、県内の窓口となる琉球大学でいご会(屋宜栄勝会長)が登録を制限している。琉大医学部で解剖実習に使用される献体は毎年三十数人程度。多くの献体登録を受け入れると長期保管となり遺骨返却に3~4年かかるため、「人生最後の奉仕」も制限せざるを得ないのが現状だ。

 同会によると、献体希望者は入会による登録手続きが必要になる。登録者が亡くなると、24時間以内に大学病院に搬送され、防腐処理が施され保管される。解剖実習後に火葬され、遺骨は大学などの納骨堂などに納めてきたが、納骨堂がいっぱいになったため13年から遺族に返却している。

  国内大学の献体数をまとめる篤志解剖全国連合会によると、22年3月31日現在の献体登録者数は累計31万5641人で、献体実行者数は累計15万2795人だった。過去10年は年間2~7千人が登録している。でいご会によると、県内では1980年代は50人以下の登録にとどまっていたが、90年代以降は70人台まで増加。05~16年は100~200件まで増加していたという。

 でいご会の屋宜会長によると、30~40年前は「遺体を傷つける拒否感だけでなくユタの助言で反対する事例もあった」という。解剖実習に足りない場合は東京都内から献体を取り寄せていたが、自治体への協力依頼などで登録数も軌道に乗った。登録希望者の一部には「火葬や墓の費用が抑えられる」との目的もあったが、遺骨返却などの手続き変更により、今はほぼ奉仕目的という。献体協力者の遺族や同会によると、献体理由は「家族が医療者だから」「親類、知人が献体したから」「難病なので死亡後は治療方法の研究に貢献したい」とさまざまだ。
 (嘉陽拓也)