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東日本、熊本…過去の教訓は生きた? 能登半島地震、割れる賛否 識者「過疎地の広域被害、大きな課題」 全国20紙合同アンケート①教訓


東日本、熊本…過去の教訓は生きた? 能登半島地震、割れる賛否 識者「過疎地の広域被害、大きな課題」 全国20紙合同アンケート①教訓 能登半島地震で倒壊した建物=1月19日、石川県輪島市中心部(災害プラットフォームおきなわ共同代表・有村博勝さん提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 與那嶺 松一郎

 東日本大震災から13年を迎えるのを前に、琉球新報「りゅうちゃんねる」など読者とつながる報道に取り組む全国20の地方紙は、1月発生の能登半島地震の対応で、東日本大震災や熊本地震など「過去の教訓が生かされたと思うかどうか」を尋ねる合同アンケートを実施した。津波避難の呼びかけなどを評価する意見があった一方、避難環境などの改善を求める声も多く、受け止めは分かれた。

 アンケートは各紙が2月にLINE(ライン)や紙面などで呼びかけ、47都道府県と海外から計4681件の回答があった。

 教訓が「十分に生かされている」と答えた人は3・2%にとどまったが、「ある程度生かされている」と答えた人は35・6%で最多だった。石川県能登町の女性(64)は「全国からたくさんの救援物資や警察、消防の支援が届いた」という。「緊迫した様子で避難をテレビで繰り返し呼びかけていた」(愛知県の女性62歳)など津波避難を理由に挙げる人が目立ち、「被災地の負担を考慮したボランティアの受け入れがされている」(秋田県の男性49歳)という声もあった。

 否定的な見方も多く、「あまり生かされていない」が21・2%、「生かされていない」は14・0%だった。「いまだに避難所では床に雑魚寝し、仕切りや暖房設備の整っていない所がある」(金沢市の女性53歳)などと避難所の環境を挙げる声が多く、「早急に(ホテルなどの)2次避難所に誘導してほしかった」(熊本市の男性73歳)という指摘もあった。

 「どちらともいえない」と答えた人も23・3%と少なくない。石川県小松市の男性(71)は「(能登)半島特有のアクセスの悪さがあり、復旧や復興が遅れている」と回答。「道路寸断など、救助したくてもできない状況が多かった」(福岡市の女性70歳)などの理由が寄せられた。

<沖縄からの回答>

Q.能登半島地震に過去の教訓は生かされていると思うか

ある程度生かされている津波に対しての意識はかなり高くなってるとニュース速報を見て聞いて感じた。女性(45)南風原町
NHKのニュースを見て、緊迫感が伝わった。ただし、現場ではTVは見れない。ラジオも持っていない人も多いと思う。海沿いを歩いている人などの映像を見て、まだまだ教訓がいかされておらず「他人事」と思っている人が多く感じた。男性(35)那覇市
病気療養者の薬剤は十分に供給されているか⁉️男性(79)那覇市
どちらとも言えない被災者の避難生活に十分な物資は足りているのか気になる。男性(24)沖縄県
国や自治体は二時避難を呼びかけていますが、倒壊した自宅の処分時期などが決まらないうちにそれを放って遠くに避難するのは難しいのでは?例えば私なら、自宅の中に大切なものや重要書類の入った金庫などもあるので現場を離れるのは難しい。女性(66)那覇市
トイレ問題はかなり切実。女性(47)沖縄県
あまり生かされていない避難場所の運営計画がどれほどなされているのか疑問。男性(62)那覇市

生かされていない
沖縄で、同じ震災が起きた場合は、もっと悲惨だと思う。男性(86)沖縄県
支援物資を御塗りたくても、流通網が、遮断されていると聞く。物資は必要ないのか?女性(72)北谷町
初動が遅かった。原発の情報が殆んど無い。一時避難をしている方が1週間経っても雑魚寝や農業用ビニールハウスにいる方がいて心配。女性(59)沖縄県

     ■    ■

 アンケートは東日本大震災13年を機に始めた協働企画「#311jp」の一環。多様な意見を聞き取るのが目的で、無作為抽出で民意を把握する世論調査とは異なります。

識者の視点
関谷直也・東京大大学院教授 (災害社会学)

 救助や復旧、避難者の支援活動が相当に遅れた能登半島地震への対応に、教訓が生かされているとは思えない。特に被災地ではインフラが長期間戻らないことが分かった時点で広域避難が必要だったが、その決断も遅れた。被害者数などから、回答者は東日本大震災と比べて能登半島地震の被害を小さく見ているのではないか。過疎地で広域な地震被害は今後、他の地域でも起こりうる。今回の地震は決して軽い被害ではない。人口減少社会の大きな課題を浮き彫りにしたとも言える。

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