「構造的差別知って」 佐藤優さん、母の戦争体験語る


この記事を書いた人 新里 哲
佐藤優さんの講演に聞き入る県立久米島高校の生徒ら=22日、同校

 【久米島】23日の慰霊の日を前に、作家で元外務省主任分析官の佐藤優さんが22日、県立久米島高校(前川守克校長)を訪れ、平和講演会を開いた。久米島出身の母・安枝さんの沖縄戦の体験を紹介し、戦後71年が経過しても米軍基地が横たわる構造的な差別から、沖縄の尊厳を回復するすべを語った。

 安枝さんは本島で沖縄戦を体験した。佐藤さんは安枝さんが激戦地だった浦添市の前田高地でガス弾のガスを吸ってしまい、戦後もぜんそくで苦しんだことや、たどり着いた摩文仁で手りゅう弾で自死を図ろうとしたことなどを伝えた。「『どんな理由があっても戦争だけは駄目だ』と母はよく語っていた」と話した。

佐藤優さん

 4月に発生した米軍属女性暴行殺人事件を例に挙げ、「米軍基地があるが故に沖縄だけひどい目に遭うことは構造的な差別だ。(沖縄を取り巻く)矛盾に気付かないのは差別が構造化されているからだ」と指摘した。「沖縄に対する差別について知り、語れるようになることが強くなるということだ。政府に頼らず、自らの社会を強くすることが大事だ」と強調した。

 講演を聞いた国吉浩一郎さん(3年)は「基地をなくすことが沖縄の願いで、安心して暮らせる一番の方法だ。県民が協力して願いを少しずつかなえたい」と語った。