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「インスタ映えする」名護市役所の庁舎 単なる行政機能だけでない、建設に込められた「設計思想」


「インスタ映えする」名護市役所の庁舎 単なる行政機能だけでない、建設に込められた「設計思想」 名護市庁舎(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 金城 大樹

 1981年に完成した名護市役所の現庁舎。耐震性や災害時の拠点機能に不安が残ることから移転・建て替えが議論されているが、市民からは現庁舎を残してほしいとの声も上がる。

 市が昨年10月に実施した市民アンケートでは、現庁舎の保存に関する項目で、回答者598人のうち40%(239人)が「建物を残したい」と回答し、39・1%(234人)は「建物は残さずに敷地を活用したい」と答えた。

 現庁舎建設の背景には、市が1973年に策定した第1次名護市総合計画・基本構想がある。構想では、都市部では失われた豊かな自然や生産を軸にしたまちづくりを目指す「逆格差論」を提唱しており、現庁舎建設でも単に行政機能を持つだけでなく「沖縄の風土を正確に捉え、表明することができる」ことが庁舎建設の趣旨になった。  

 現庁舎は、市が1978年に実施した設計コンペで選定された建築家グループ「象設計集団」がデザインした。庁舎は冷房を使わず自然エネルギーを活用する「風の通り道」や、集落内の祭祀(さいし)場「神アサギ」をモチーフにした「アサギテラス」、市内55字と庁舎を象徴する56体のシーサー(2019年に撤去)など、地域の風土を取り入れた設計で、81年に完成し、同年に日本建築学会賞(作品)を受賞した。

 市は「文化的価値がある建物として保存活用を望む声がある一方、耐震不足・維持管理費などを懸念する意見もある」とし、一部保存やデジタル保存などを検討する。(金城大樹)