ベテランに聞く糸満ハーレー【島ネタCHOSA班】


ベテランに聞く糸満ハーレー【島ネタCHOSA班】 中村は緑に桃色のサージのハーレーギン(衣装)を着用するのが特徴(提供:糸満市)
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毎年旧暦5月4日に行われる伝統行事、糸満ハーレー。今年の開催は6月9日(日)。約半世紀、毎年欠かさず参加を続ける糸満ハーレー行事委員会参与の与那嶺和直さんに、お話を聞いてみました。

大漁祈願と航海安全、家内繁盛を願って、毎年旧暦5月4日に開催される糸満ハーレー。古い時代の集落である西村、中村、新島(みいじま)の3村がチームを組み、各村の選りすぐりのハーレーシンカ(漕ぎ手)が、誇りを賭けて船漕ぎ競争を繰り広げる伝統行事です。

「ウグヮン(御願=拝み)に始まり、ウグヮンに終わる」祭りとしても知られ、最初に高台の拝所「サンティンモー(山巓毛)」での祈願が行われ、御願バーレーで開幕。御願バーレーの決着がつくと、白銀堂に詣でて結果を報告。その後、職域ハーレーを織り交ぜつつ、青年団ハーレー、中学生ハーレー、クンヌカセー(転覆競漕)と続き、他の種目(855メートル)の約3倍の距離を漕ぐ2150メートルのアガイスーブでクライマックス。最後に、ヌンドゥンチ(ヌン殿内)でハーレー歌を奉納して行事が終わります。

練習で性格変わる?

与那嶺和直さん

「練習は40日間。厳しいけど、やり遂げたら人間が変わっているよ」と話すのは、糸満ハーレー行事委員会 参与の与那嶺和直さん。初参加の中学生は顔が引き締まり、性格も変わるそう。

「道徳や礼儀作法から教えるから、学校に行かなかった子が通うようになったり、家でも茶碗を洗うようになったり。指導は厳しいので、苦しいこともあると思うが、練習が終わったら親子や友達のように、ざっくばらんに話し合う。道で会ったら、挨拶をしてくれるよ」と満面の笑顔を見せます。

中学生ハーレーから経験を積み重ね、青年団ハーレー、本バーレー(御願バーレー、クンヌカセー、アガイスーブ)の漕ぎ手へと上がっていくそうですが、ハーレーギン(衣装)に染め付けられた丸印で漕ぎ手の段階が見分けられる、と与那嶺さん。中学生ハーレーは中がくりぬかれたドーナツ型、青年団ハーレーは横並びの丸印2つ、本バーレーは縦印2つなのだとか。丸印で成長が分かるのですね。ちなみに、ハーレーギンは村ごとに色が異なり、西村は紫、中村は緑(サージは桃色)、新島は赤。ハーレー舟やエーク(櫂)にあしらわれた波型の装飾も3村ごとに違っています。

西村は紫のハーレーギン(衣装)を着用するのが特徴(提供:糸満市)
新島は赤のハーレーギン(衣装)を着用するのが特徴(提供:糸満市)

伝統の意味

「伝統とは、続けることだと思うよ」と確信を込めて口にする与那嶺さん。その言葉の通り、与那嶺さんは、中学3年で漕ぎ手に選ばれて以来、約半世紀の間、1年も欠かすことなくハーレーへの参加を続けてきました。船漕ぎのエースである一番エーク(先頭の漕ぎ手)、トゥムヌイ(舵取り)を歴任し、全種目で1位を獲得。前代未聞の9連覇の偉業を成し遂げた実績の持ち主です。

「ハーレーは自分でやってみないと分からない」。漕ぎ方はもちろん、糸満ハーレーに欠かせない神事も、先輩方から教えられたやり方を忠実に受け継ぐことで身に付いていく、と力を込めます。旧暦での開催を守り続けることも、先輩方のやり方を継承するという強い思いが根底にあるそう。

伝えられる伝統は、地域の歴史の結晶といえるもの。「ハーレー歌も先輩から教えられる。アガイスーブの歌には、首里の王様をたたえるものもある。ハーレー舟もエークも、糸満独特のもの」と誇らしげに話してくれました。

今年の開催は日曜日。読者の皆さんもぜひ糸満漁港に足を運んでみてください!

(2024年5月30日 週刊レキオ掲載)