妊娠・出産に伴い女性が働き方の見直しを余儀なくされがちな中、徳元裕子さん(27)=那覇市=は3人目を出産した後に起業した。子育てしながら会社に勤める難しさを感じ、自分で両立しやすい環境をつくろうと合同会社ANZYを立ち上げた。従業員は全員が女性だ。「大切にしているのは女性のきめ細やかさを生かした施術。出産明けも職場に戻れるように環境を整えている。私が周りに助けてもらった分を返したい」と夢を描く。(高江洲洋子)
ANZYは県内でまつげエクステンションのサロン4店舗を那覇市や沖縄市などに展開する。まつげエクステンションはまつげの間に人工まつげを装着する技術で、施術するには美容師免許が必要だ。徳元さんは専門学校で学んで美容師免許を取得し、同じ学校出身の中山真衣さん(27)と、神谷ちかさん(27)と2014年にANZYを設立した。高校の同級生、東江みゆきさん(26)も受付などを手伝う。徳元さんは「沖縄は店舗が少なかったので可能性があると思った」と起業した理由を語る。
従業員17人のうち、常勤雇用の社員5人が主に受付や事務を担当する。それ以外の12人は美容師免許を持つ個人事業主として登録し、業務委託の形式で施術を担う。ANZYではあらかじめ施術の時間枠を設け、予約を受け付ける。予約に応じて12人が交互に出勤し、歩合給(委託料)を得る。育児中でフルタイム勤務は難しくても、希望する日に技術を生かした働き方ができるという。
徳元さんは理容師の夫と共に5歳の双子と3歳の子どもを育てている。ヘアサロンで働くことも考えたが、不規則勤務のサロンが多かったため、子育てとの両立が難しいと断念した。
双子が1歳になった後、コールセンターで働いた。子どもの体調不良で休む際にも理解のある職場だったが、3人目を出産後、度重なる早退に心苦しくなり退職した。「ゆとりを持って仕事も子育てもしたい」という思いが背中を押した。新たな挑戦は50代で農業を始めた母親・下地映子さんの影響も大きいという。八重瀬町に約3300平方メートルの畑を構え、インゲンを育てる母親の姿に感化された。
ANZYの顧客は20代から70代までと幅広い。徳元さんは「自由な働き方をしながら子育てできる人が増えてほしい。働く人が幸せだとお客さまにも思いが伝わる」とモットーを語った。