芳賀郁さんの「隣人」 琉球新報短編小説賞


この記事を書いた人 新里 哲
芳賀郁さん

 第44回琉球新報短編小説賞の最終選考会が21日、東京都内で行われ、芳賀郁(はが・かおる)さん(37)=名護市、知的障がい者支援施設事務員=の「隣人」が受賞作に決まった。佳作には糸数晃さん(48)=那覇市、大学職員=の「サガリバナの咲く川辺で」が選ばれた。

 応募作35編を2次にわたる予備選考で5編に絞り、芥川賞作家の又吉栄喜、文芸評論家の湯川豊、早稲田大学教授の勝方=稲福恵子の3氏が最終選考を行った。

 「隣人」は結婚を機に東京から沖縄に移り住み、1年前に脳梗塞で夫を亡くした30歳の女性が主人公。失意の中で独り暮らしを続けるうちに、それまで意識しなかった隣人たちとの交流が始まる。そして、隣人たちの沖縄への思いの深さにふれ、そこに惹(ひ)かれる自分に罪の意識を抱く。

 選考会で又吉氏は「沖縄戦を生々しく書いていないが、伝わる」、湯川氏は「人間関係でシーンを作っており、それにリアリティーがある」、勝方氏は「移住者として入ってきた人が、沖縄を消化できるようになる過程が、丁寧に繊細に書けている」と評価した。

 贈呈式は来年2月3日、那覇市の沖縄県青年会館ホールで開催する。