辺野古岩礁破砕 国、知事再許可は「不要」 漁業権放棄を根拠に


この記事を書いた人 志良堂 仁

 米軍普天間飛行場の移設計画に伴う名護市辺野古の埋め立てに関して、地元の名護漁業協同組合による一部漁業権の放棄を巡り、水産庁が知事権限の岩礁破砕許可が必要なくなる漁業権の放棄となるとの解釈を示していることが2日、分かった。水産庁は漁業法31条などを根拠に漁業権の放棄は組合員の同意により成立するとの解釈を示した。これを踏まえ政府は、岩礁破砕許可の再申請をしない意向を固めた。これに対し県は、漁業権の変更に県知事の免許の必要性を定めた漁業法22条に基づき、漁業権の一部放棄後も岩礁破砕の知事許可が必要との見解を示し、国と県で見解は真っ向から食い違っている。

 水産庁は本紙取材に対し、漁業法31条などに基づく漁協の総会決議か、3分の2以上の書面同意を得ることが漁業権放棄の手続きであると説明し「(漁業権の放棄に)県の同意や許可は必要ない」との見解を示した。政府は漁業権が放棄されたことで、県知事の岩礁破砕許可が不要になると解釈している。
 名護漁協は今年1月13日に沖縄防衛局と辺野古崎周辺の臨時制限区域周辺の漁業権を放棄する漁業補償契約を交わした。補償額は約6億円。漁協は2013年に埋め立て区域の漁業権を放棄。今回はさらに広く臨時制限区域の漁業権を放棄した。13年当時は、防衛局は漁業権の放棄の後、当時の仲井真弘多知事に岩礁破砕許可を申請していた。
 漁協によると、組合員からの書面同意を集めた上で昨年11月28日に臨時総会を開き、賛成多数で臨時制限区域の漁業権を放棄することを決めた。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設の現場となる大浦湾海上の臨時制限区域全域(561・8ヘクタール)の漁業権を放棄した。
 これを受けて政府は臨時制限区域内での岩礁破砕許可に関する知事権限が無力化したと解釈し、県へ岩礁破砕許可の再申請を提出する必要がない前提で大型ブロック投下などの作業を進めるとみられる。
 再申請を回避し知事権限の無効化を狙う政府に対し、県は許可なく工事するのは違法だとして、国を相手に訴訟を提起することも検討している。