米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画に伴う名護市辺野古沿岸部の岩礁破砕許可を巡り沖縄防衛局は、「名護漁協の漁業権放棄決議によって許可の前提となる漁業権が存在しなくなったために許可を取得する必要はない」と主張し、4月以降、県の許可を得ずに新基地建設工事を続けている。
県は「漁業権の変更(一部放棄)は知事の承認を得ない限り成立しない」として、漁業権はなお存在し、許可申請は必要だとしている。一方、那覇空港の第2滑走路建設では、国の機関である沖縄総合事務局は地元漁協が漁業権放棄を決議して以降も漁業権は存在するとの認識で、県に岩礁破砕許可を申請している。
辺野古新基地建設では2013年3月、那覇空港第2滑走路は同年6月ごろ、それぞれ関係する漁協が工事に伴う漁業補償を受けることを条件に、工事区域の漁業権を放棄する特別決議をしている。
その後の13年9月1日、県は10年に1度の漁業権更新を行った。この中では地元漁協が漁業権「放棄」を決議した辺野古新基地建設予定地、那覇空港第2滑走路建設予定地でも、海域への漁業権自体は存続していると告示されていた。これを受け防衛局は14年7月11日、岩礁破砕許可を県に申請し、同年8月28日に仲井真弘多前知事が許可した。
一方、新基地建設に反対する翁長県政の発足後に防衛局は、県への岩礁破砕許可申請を回避するため、名護漁協に対し、漁業法31条と水産業協同組合法50条に基づいて漁業権を放棄する特別決議を再度可決することを依頼。名護漁協は、工事区域だけでなく、周辺の臨時制限区域の漁業権も併せて放棄する特別決議を16年11月28日に可決した。
これを受け防衛局は13年9月1日に県の漁業権見直し決定で「復活」したはずの漁業権を再び「消滅」させたとの法解釈に基づき、破砕許可の不申請を決めた。
これに対して県は漁業法31条や水産業協同組合法50条は漁業権を放棄する「内部手続き」の在り方を定めただけで、漁協の内部決定だけで漁業権は自然消滅しないと指摘している。