「命守るというなら嘉手納も金武も」 移設根拠の詭弁突く 護岸着工1ヵ月


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「この海を壊すといわれて納得できますか」と問い掛ける新名善治汀間区長。奥に見えるのは新基地建設予定地=名護市汀間

 【名護】米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古での新基地建設で、大浦湾海上での護岸工事着手から25日で1カ月がたった。K9護岸建設現場では、沖縄防衛局が砕石を次々と砂浜に敷き詰めている。名護市汀間の新名善治区長(64)は「政府はどんなことをしても埋め立てるつもりだろう」と、苦々しい表情でつぶやく。

 大浦湾に臨む汀間区は区民約240人の小さな集落だ。区は移設反対を決議している。区内を流れる汀間川沿いに区民総出で遊歩道を整備するなど、政府の振興策に頼らない地域活性化にも取り組む。新名さんは2013年に区長になった。護岸着工の翌日には、辺野古埋め立て承認を早期に撤回するよう県に要請するなど、区を代表して移設阻止を訴え続けている。

 政府はこれまで汀間区で新基地建設についての説明会を開いていない。新基地が完成した場合、区民の頭上を米軍機が飛び交うことにもなる。政府が「地元」という久志区より汀間の方がむしろ新基地建設予定地に近い。新名さんは「(移設に)反対すると説明会すら開かない。政府にとって汀間は地元ではないのだろう」と皮肉を口にする。

 防衛局の職員は1~2カ月に1度、汀間区を訪れる。そのたびに、大浦湾を埋め立てる理由を問うが、職員は「県民の命を守るためで、世界一危険な基地である普天間飛行場の危険性除去だ」と同じ答えを繰り返すだけだ。新名さんはその答えを「詭弁(きべん)だ」と切り捨てる。「普天間と同様、住宅地にある嘉手納町や金武町の基地も撤去するのかと聞くと黙る。通りのよい言葉でごまかしているだけだ。本当に(県民を)守るためなら撤去すると言えるはずだ」と指摘する。

 新名さんは基地建設に反対してくれと押し付けているわけではない。仮に、政府が県民の命を守るために嘉手納も金武も基地を撤去すると説明するなら移設受け入れを考える必要もあるかもしれないと説く。だが、実態はそうではない。

 新名さんは上京して政府にも再三、移設撤回を訴えてきた。政府は危険性除去を繰り返し、全基地撤去を問うと黙り込んだ。「つじつまの合わない建前しか話さず、海を壊して基地を造る。納得できるはずがない」と怒りをこらえながら語る。

 「実態を知り、自分の価値観で判断してもらいたい。この海を残せるかどうかの大きな分岐点だ。わが身に置き換えて、もう一度考えてみてほしい」と話した。(佐野真慈)