【ブラジル】50ヵ国に人工呼吸器販売 県系2世の宮城・金城・透さん


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 ボリビア生まれの県系2世のウチナーンチュがブラジルの医療機器分野で活躍している。宮城・金城・透さん(46)がその人だ。中東や東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカなど約50カ国に移動型人工呼吸器「OxyMag」(オクスィマーギ)を輸出するMagnamed(マギナメージ)社に前職の先輩に誘われて入社。08年からは役員を務めている。

 透さんの両親は戦後移民。1963年に旧大里村からボリビアに渡った父、宮城省和さんと61年に糸満市から渡った母、宮城(旧姓金城)洋子さんの間に生まれた。透さんが4歳だった74年、洋子さんの兄弟の呼び寄せで一家そろってブラジル・サンパウロ州サントアンドレー市へ移住した。両親は農業に従事したが、大変苦労したという。

 透さんはサンパウロ総合大学(通称USP)工学部を95年に卒業。大学生時代、日本に出稼ぎに行き、このまま出稼ぎになろうといったんは思ったものの、大学を出ることを決めた。卒業後は教師として数年間務めた後、99年に日系2世の上田亘さん(56)、鈴木達雄さん(67)が当時勤めていた会社に電気技師として採用された。

 上田さんにエンジニアとして一人前になるべく育てられた。だが、5年ほど勤めたころ、上田さんと鈴木さんが、自由に商品を開発したいとの思いから会社から独立・起業するために、会社を去った。その約半年後、透さんは2人からの誘いを受け、Magnamed社の社員1号となった。

 Magnamedは2005年の設立当初、上田さんの母親の車庫で設計などの業務をしていた。今は大企業が集中するサンパウロ市のパウリスタ通りというオフィス街付近に事務所を構える。開発した移動型人工呼吸器を海外約50カ国に輸出している。新たな市場開拓を目指し、米国に工場を造っている。

 当初は商品はまだ完成していなかったものの、07年から毎年ABIMO(ブラジル医療機器産業協会)を通して医療機器分野の主要国際フェアに参加し、商品の開発計画や部品を紹介してきた。製品が完成した10年。国際フェアで会った南アフリカの企業から売ってほしいという話があり、輸出することに。上田さんは「国内よりも一足早く海外へ輸出ができた。最初から輸出を考えていた。ブラジル国内では輸入品が多い。それらに匹敵する商品を開発しなければならなかった」と振り返った。

 OxyMagは利用者の利便性を考え、画面の「赤ちゃん」「子供」「大人」の三つ大きなボタンを押すだけで利用開始が可能で、細かい調整も使いながらできるという。従来の呼吸器は操作が難しく、訓練を受ける必要があった。長距離移動も考えて、重さはたったの3キロ、6時間半も持続するバッテリーを搭載しており、それも人気の要因だという。移動式だが、集中治療室でも使えるような本格的な機能も備えている。鈴木さんは「患者が集中治療室などからの移動時、呼吸の品質を維持するのが重要だ」と話す。

 OxyMagは米国やカナダ、日本ではまだ販売されていない。現在は米国進出を目指し、手続きを進めている。(城間セルソ明秀通信員)