【キラリ大地で】フィンランド 大学で日本語指導 喜納政和さん


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フィンランドで日本語を教える喜納政和さん

 北欧フィンランドの北部に位置し、北極圏の入り口の街として知られるラップランド州の州都ロバニエミの大学で日本語を教えているウチナーンチュがいる。その人は那覇市出身の喜納政和さん(70)。1979年創立のラップランド大学で日本語を教える傍ら、観光ガイドとしても活躍している。

 ラップランド州は首都ヘルシンキから北に約800キロにある。10~2月にかけて、ほぼ毎週オーロラを見ることができ、サンタクロースが住む「サンタクロース村」があることでも有名だ。

 喜納さんは65年に那覇高校を卒業後、日本大学獣医学科に進学。大学卒業後は県庁で獣医として勤務していた。旅行で訪れたフィンランドで、フィンランド人のアウネさんと運命的な出会いを果たして、結婚。一時期、夫婦で沖縄本島にも住んでいたが、82年、フィンランドに移り住んだ。それから30年以上、ロバニエミに住んでいる。

 フィンランドでは、家族に対する価値観が日本と少し異なる。結婚してからも一対一の男女として付き合っている気がする。喜納さんは、妻のアウネさんをとても大切にしていて、会話の中からも、愛妻家だということが伝わる。

 フィンランドの最北にあるラップランド州の冬は雪がたくさん降り、川や湖も凍る。太陽がほとんど昇らない日も2カ月から3カ月ほど続く。暖かい那覇で生まれ育った喜納さんはフィンランドに来た当初、「寒さが大変だった」と振り返る。

 喜納さんは移住当初、日本でいうカルチャーセンターのような「市民学校」で日本語を教え始め、2004年からはラップランド大学で日本語を教えている。同大で日本語を教え始めて、13年になるという。

 喜納さんが日本語を教えるに当たって大切にしていることは、学生に日本のことを知ってもらいたいと思いながら日々、教えているという。フィンランド語は、発音や言語の構成で、英語やドイツ語など他のヨーロッパの言語と異なる点もあるから、日本語を教える時は、フィンランド語と日本語の似ているところや違うところを説明することに気を配っていると話す。沖縄についても授業で紹介するという。「日本というくくりを大切にしている」と強調する。

 ラップランド州の夏は沖縄の夏とは違ってとても短く、空気が乾燥し、さらっとしている。「白夜」といって太陽が24時間昇っていて、夜でも昼間みたいな日がロバニエミでは1カ月ほど続く。6月の気温は10度ほど。「暖かい夏を心待ちにしている」と話す喜納先生のフィンランドでの36年目の夏が始まる。
 (半嶺まどか通信員)