強い毒を持ち、人が刺されると死に至ることもある南米原産の特定外来生物「ヒアリ」の沖縄県内への侵入・定着を防ごうと、県は本年度から水際対策を強化している。本年度事業費は3千万円を計上し、沖縄科学技術大学院大学(OIST)に外来アリ類の早期発見技術の検討と開発を委託している。沖縄本島や石垣島の25カ所の調査区で侵入を監視するほか、侵入経路となり得る主要港湾に捕獲用トラップを仕掛けるなど、「入れない」を前提とした厳格調査に乗り出している。
どう猛で人的損害が懸念されるヒアリは台湾や中国ではすでに定着しており、国内でも先月、兵庫県で初めて確認された。県内での確認は現時点ではないが、沖縄は外来種に脆弱(ぜいじゃく)な島しょの上、物流や観光客の行き来が活発なため、徹底した防除対策が急務だった。
県は2016年度からヒアリ対策事業を立ち上げ、同種の繁殖が10年以上拡大する台湾での視察研修などを通して防除技術や初動体制の検討・確立を図ってきた。本年度は台湾に最も距離が近い石垣港や県の物流拠点である那覇港で通年にわたり捕獲トラップを仕掛けるほか、本部港、中城湾港でも侵入がないか監視する。
ヒアリやアルゼンチンアリなどの外来生物に詳しい国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室の坂本佳子さんはヒアリが好む営巣場所は「コンテナや公園の芝生など開けた場所」で、人間が生活している環境にも入り込んで増殖する可能性を指摘する。高温多湿の沖縄でも「十分、繁殖が可能」とした上で、行政が主体となったリスク管理の重要性を説いた。
環境省も国内での増殖を警戒し20日から、ヒアリの生態や駆除方法、刺されたときの対処方法などをまとめた基礎資料「ストップ・ザ・ヒアリ」を同省のホームページで公開し、注意喚起している。