沖縄戦戦没者、民間人遺骨も鑑定へ 厚労省対象広げる


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 厚生労働省は民間人を含む沖縄戦戦没者の遺骨のDNA鑑定に向けた作業に着手する。26日から今月12日に集団申請した遺族らに対し、順次、DNA鑑定申請書を送付し、情報収集に努める。26日、厚労省事業課の担当者が沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表に電話で伝えた。政府はこれまで鑑定の対象は軍人・軍属であることや死亡場所の地域条件を設けるなど限定的な対応をしていたが、今後は民間人の戦没者も鑑定の対象とし、国の責務として戦後処理問題の解決に乗り出す。

 具志堅さんは「涙が出るほどうれしい。一人でも多くが遺族のもとへ返ることを願っている。大きな一歩につなげたい」と期待した。

 厚労省はことし3月に死亡した場所が比較的特定しやすい旧日本軍の関係者の遺族だけでなく、民間人の犠牲者についてもDNA鑑定の対象を広げることを発表した。これを受け具志堅さんと遺族らは今月12日、東京都内で厚労省担当者と面談し、民間人を含む戦没者169人分の遺骨の身元を特定するためのDNA鑑定を望む遺族の名簿135人分を提出した。

 厚労省の担当者は本紙取材に「希望者全員の鑑定が必ず実現するかについては、現段階では分からない。柔軟に対応したい」との見解を示した。

 今回、鑑定を求めている戦没者の大半は民間人で、死亡場所も分からない例が多い。

 具志堅さんはこれまで限定的だった鑑定対象の裾野が広がったことについて一定の評価をするものの、鑑定実施の基準の不透明さに疑問を呈す。「戦争の犠牲になった全ての人々の遺骨を捜し、遺族に返すことは国の責務だ」と訴え、遺族の高齢化が進む中、迅速な対応を求めた。

 学徒兵として動員され、本島南部で亡くなったとみられる兄・榮徳さん(享年14)の遺骨を探すため集団申請に名を連ねた新里良彦さん(81)=那覇市=も、今回の政府の判断に「大変喜んでいる」と語った。ただ、戦後72年がたち個人レベルでの遺骨収集が極めて困難な状況であることを理由に「国や県の協力が不可欠だ」と強調し、民間人を含む全戦没者の鑑定を認めるよう懇願した。

 厚労省は今月中にも省のホームページ上でDNA鑑定の申請希望者を募る。

英文へ→DNA of remains of war victims to be examined