戦火逃れたクバの大木 “平和の象徴”キジバト居着く


この記事を書いた人 琉球新報社
【写真左】クバの木にある巣に巣材を運ぶ父バト=3日、那覇市具志、【写真右】戦火を逃れたクバの木で巣を守る母バト

 戦火を逃れた大木は平和の象徴を運ぶハトの第二のふるさと―。那覇市具志の上原祥典さん(60)宅にある古いクバの木でハトが子育て真っ最中だ。沖縄戦で焼け野原になった具志地域で戦火を逃れた数少ない木にハトが居着く姿に、上原さんは「木を植えた祖父も平和を大事にした人。ハトも祖父を信頼しているのかも」とほほ笑んだ。

上原祥典さんと、祖父の松さんが植えて戦火を逃れたクバの木

 上原さん宅にあるクバの木は高さ7メートルほど。戦前、上原さんの祖父の松さんが植えたと伝え聞いている。上原さんが12歳のころに88歳で亡くなった松さんは、農業をしながら漢方医として無償で患者を治療した。上原さんは「人から信頼された人だった」と振り返る。

 沖縄戦では激しい艦砲射撃に見舞われた具志地域。それでも松さんのクバの木は生き残った。家の建て替えをした際もそのままの場所で残った木は、樹齢100年を超えるとみられている。上原さんは「子や孫にも引き継ぎたい」と、木の根元には「松オジーの木」と書かれた看板を設置した。

 そんな松オジーのクバの木には、10年前から毎年同じ時期にキジバトが訪れるようになった。クバの木での営巣は少なくとも今回で3回目だという。3日には、母バトが巣を守り、父バトがエサや巣材をせっせと運んでいた。「ハトの第二のふるさとのよう」と笑う上原さん。「大事に引き継いでいきたい」と語った。(田吹遥子)