静かな小集落、突然の緊張 新基地建設の資材搬入拠点に一変 国頭村奥の住民、涙の抗議


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
奥港に入ってくるダンプカーを見て不安そうな表情を浮かべる住民ら=13日、沖縄県国頭村奥

 人口189人、沖縄本島北部の国頭村奥(おく)。車の往来もほとんどない静かな場所が13日、一変した。米軍普天間飛行場移設先の大浦湾に運ばれる砕石を積んだダンプカーのほかパトカーや機動隊などの警察車両が何十台も通り、物々しい雰囲気に包まれた。奥の住民らは、名護市辺野古の新基地建設に海上資材を搬入するため、集落を行き交うダンプカーに戸惑いを見せた。

 次々と奥港に入ってくるダンプカーを見た女性(85)の頬は緊張でこわばっていた。「もう泣きたい。この静かな奥は、とってもゆっくり過ごせる場所だよ。静かだから今まで安心して暮らして来られたんだよ。それをもう何百台もあんなトラックが通ったら。私たちに家を出るなということか。年寄りは死ねということか」と目に涙をためて言った。

 工事に反対する人たちはダンプカーの前に座り込んで搬入を阻止しようとしたが、機動隊に強制排除された。74歳の男性は顔をしかめて機動隊と工事に反対する人たちのもみ合いを見ていた。「賛成反対以前の問題だ。国は順序を踏んで集落に説明するのが当然だろう。いきなり機動隊を導入してトラックを運搬するなんて筋が通らない。集落みんなを怒らせて強行するのはおかしいよ」と憤った。

 ダンプカーは午前と午後の2回、それぞれ約25台が港に集結した。1台1台、大型台船に乗り込み、ガラガラと音を鳴らして荷台の石材を積み込んでいった。

 奥は65歳以上の高齢者が約4割を占める。この日も腰を曲げてつえをついた女性たちが、集落から歩いてきた。88歳の女性は自分のみかん畑に行く道を指さし「今まで安心して軽トラでゆっくりゆっくり走ってたのに。ダンプカーが通るから、もう危なくて畑も行けないさ」と不安げに言った。

 ダンプカーが通る道には奥小学校があり、この日は奥小の職員も不安そうな顔を浮かべて様子を見ていた。奥小で勤務経験のある女性(73)は「授業中もダンプカーが通ったら子どもたちに悪影響だ。静かな環境で自然と一緒に育ってきたのに…」と複雑な表情を浮かべた。

 防衛省沖縄防衛局によると、奥港の利用期間は2018年3月31日まで。国頭村の宮城久和村長は「奥港は県の管轄なのでコメントする立場にないが、住民生活に支障が出ないように最大限配慮してほしい。国道を多くの工事車両が通って渋滞が発生したら、奥集落の問題だけではない」と強調した。