鳴き声以外全部食べる! 豚1頭を食べ尽くす沖縄の「豚正月」って? ソーキ汁、とんかつ、中味汁 うるま市で体験会


この記事を書いた人 琉球新報社
豚と触れ合う子どもたち=14日、うるま市仲嶺の生涯学習・文化振興センターゆらてく

 【うるま】沖縄の伝統的な豚料理を食べ、豚について知る機会をつくろうと「豚正月(ウヮーショーガチ)体験会」が14日、うるま市生涯学習・文化振興センターゆらてくで開かれた。豚を丸々1頭使い、さまざまな部位からスーチカーや中味汁など7種の料理が振る舞われた。参加した約100人の親子連れは舌鼓を打ちながら、豚と沖縄の食文化について学んだ。

 体験会は、ハワイ移民者が戦後、食糧難に苦しむ沖縄へ豚550頭を送った史実を基にした音楽劇「海から豚がやってきた」の実行委員会が中心となり、有志13人が集まって企画した。

 うるま市内でアンダカシーを販売する「龍華」の國場麻梨江さん(33)は「鳴き声以外全部食べると言われるほど、沖縄で豚肉の文化が根付いている。おいしく食べてもらい、豚の命を知ってもらう『豚育』をしたいと企画した。豚へ恩返ししたい」と意図を語った。

豚1頭を使った料理を楽しむ親子連れら

 養豚を営む池宮城宏さん(57)は子どもたちに生きている豚も見てもらおうと、豚2頭を連れて来て展示。子どもたちはバナナをあげながら「毛がさらさらしていて、かわいい」「肌が固い」などと触れ合った。

 会場には、事前に解体し、調理されたソーキ汁、チムシンジ、アンダカシー、とんかつ、炭火焼きソテーなどの豚料理がずらりと並べられた。國場さんはマイクを握り、ハワイ移民の歴史に触れ「戦後、故郷を思って豚を送ってくれたから今もおいしく食べられている。感謝し、これからも豚と共に笑顔で暮らそう」と呼び掛けた。

 市内で活動する「てぃーだぬふぁー童唄会」の子どもたちによる正月の童唄や三線の演出もあった。

 家族で訪れた兼城力也さん(33)=うるま市=は「沖縄の豚料理の伝統文化を語り継ぐことにつながるいいイベントだと思った。食べながらだと分かりやすい」とほほ笑んだ。息子の敬汰ちゃん(2)と靖和(はると)ちゃん(1)もおいしそうに頬張った。

 アンダカシーを食べたアメリカ出身のデビット・メガラさん(45)=沖縄市=は県内で暮らして30年になる。「アメリカでも似た食べ物があり、チップスのように食べていた。懐かしい」とほほ笑んだ。