愛楽園で写真、陶彫展 苦難の歩みや40年前写真 鈴木、伊志嶺さん出品


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尊厳を奪われた苦しみを麻袋をかぶった半身像で表した「闇の中で」と、作者の伊志嶺達雄さん=1日、名護市済井出の沖縄愛楽園交流会館

 【名護】沖縄県名護市済井出の沖縄愛楽園で1日、写真と陶彫(土を焼いて作る彫刻)の共同企画展「沖縄の傷痕」が始まった。同園の交流会館で8月末まで開く。愛楽園で暮らす人々を捉えた写真家の鈴木幹雄さん撮影の作品と、愛楽園入所者の証言集を基に陶芸美術家の伊志嶺達雄さんが制作した陶彫作品などを展示している。

 「ここでしか生きられなかった人たちがいて、ここでしか生きられない人たちがまだいるということを知ってほしい」。1日、開幕式であいさつした伊志嶺さんは作陶のきっかけを語った。「らい予防法」により隔離され、風評によって差別や偏見を受けてきたハンセン病患者の思いや愛楽園の歴史を伝えたいと作品づくりに取り組んだ。

 人間の尊厳を奪われた患者の苦しみを麻袋をかぶった半身像で表現し、強制堕胎させられこの世に生まれることを許されなかった胎児をぐるぐる巻きの布の塊に表した。伊志嶺さんは「作品を見て、『怖い』や『生々しい』と感じるかもしれない。だが、患者の皆さんはその何百倍の痛みや苦しみを感じている。傷痕にふたをするのではなく形にすることで過ちを繰り返さない未来につながる」と語った。

展示作品に見入る来場者ら

 鈴木さんの写真は40年前の愛楽園入所者の暮らしを切り取ったもの。三線を弾く姿にカチャーシーを踊る様子、酒を酌み交わす姿などが写し出されている。愛楽園自治会の金城雅春会長は「笑顔が多く、なかなか表情を面に出せない人たちの自然体が写っており、貴重な瞬間が切り取られている。多くの人に見てほしい」と話した。

 企画展は、沖縄愛楽園交流会館(名護市済井出1192)で、午前10時~午後5時。入館無料。月曜、祝日は休館。

 また愛楽園ではハンセン病を伝える舞台プロジェクト「講談風語り 風の鳴る丘」を各地で開催する。日時は20日午後2時半(同園交流会館)、21日午前10時(宜野湾市の東本願寺沖縄別院)、22日午後7時(那覇市首里のアルテ崎山)。問い合わせは同館(電話)0980(52)8453。