沖縄県の翁長雄志知事の膵臓(すいぞう)に腫瘍が見つかったことで、翁長知事の去就など今年秋にも予定される知事選への影響を注視する動きが広がっている。与党は「手術の結果が出る前に、後継の話ができるはずない。現時点では2期目への出馬が既定路線だ」との姿勢を崩さないが、野党からは「知事辞任による知事選の前倒しも視野に候補者を選考しなければならない」との意見が出始めている。
「9月の統一地方選での同日選もあり得る」。翁長知事の会見を見た自民県連関係者はそう予測した。見つかった腫瘍が良性か悪性か不明な中、野党を中心に県内政界では「知事選が前倒しされる可能性がある」との見方が広がっている。自民県連幹部の一人は「翁長知事が2期目に出馬するかどうかよりも、任期を全うできるかも含め考えなければならない」と話し、22日の沖縄市長選後に候補者選考作業を本格化させる考えを示した。
一方、与党は、翁長知事が自ら会見を開き、「元気な姿を見せた」(与党県議)ことで、引き続き翁長知事の2期目出馬を既定路線に選挙態勢を再構築していく考えだ。知事が検査入院して以降、直接話した周辺の一人は「本人からは全く弱気さを感じなかった。けろっとした感じで『大丈夫だから心配しないで』と言われた」と述べた上で「政治的にはやる気だ。2期目に向けて知事選に出馬するという自分の見立ては変わっていない」と話す。
ただ、慎重な声もある。知事周辺の一人は「腫瘍が悪性の場合、手術で取り除けばそれで解決するという話なのかも分からない。今月に予定される手術がどうなるかを見定める必要がある」と語り、不安をのぞかせた。
翁長知事の病状を巡っては、検査入院が判明した直後から国会周辺でも臆測を含めたあらゆる情報が駆け巡った。
閣僚から「一日も早く公務に復帰されることをひたすら祈っている」(福井照沖縄担当相)との声も上がったが、水面下では複数の自民・政府関係者から「膵臓がんではないか。次の知事選は無理だろう」との声が漏れるなど、健康不安説が広がった。
知事選に向け、前哨戦となる一連の県内市長選は今年に入り、自民系候補が2勝1敗と勝ち越し。沖縄市長選が間近に迫る中、自民党関係者は知事が支援する候補の応援に入れないと推測し「うちが応援する現職の再選に向けて盛り上がっている」と息巻いた。
同時に知事周辺では辺野古新基地建設の埋め立て承認撤回の準備が急ピッチで進む。知事の病状を踏まえ、野党国会議員からは早期の撤回を求める声も噴出する。政府はこの動きを察知しており、防衛省関係者からは「折り込み済みだが、近いと思わないといけない」と警戒感をあらわにした。
(吉田健一、仲村良太、島袋良太)