「差別、今も実感」 ハンセン病家族訴訟 沖縄県内から金城さん初証言 熊本地裁  


この記事を書いた人 Avatar photo 高良 利香

 国が長年続けたハンセン病強制隔離政策のため、患者本人だけでなく、家族も深刻な偏見や差別を受けたとして、元患者の家族で沖縄県内在住の244人を含む508人が国に謝罪と損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が11日、熊本地裁で開かれた。ハンセン病回復者の母を持つ県内の金城正樹さん(46)が法廷で証言し、差別や偏見が根強いハンセン病問題の解決につながる判決を求めた。原告本人尋問は今年3月に始まり、県内在住の原告が証言するのは初めて。

 金城さんの母は、2001年に熊本地裁が国による患者の隔離政策や不妊手術の違憲性を認めたハンセン病訴訟の原告だった。

 3人きょうだいの末っ子の金城さんは、小学5年の時に母が療養所に再入所した際、母が以前も療養所に収容され、つらい経験をしていたことを初めて聞かされた。その後も母の過去を聞くようになり、自身もつらかったことを明かした。両親の仲にも影響するなど、「母が自分を卑下して生きてきたことが自分の人格形成にも影響している」と目に見えぬ被害を訴えた。

 母親がハンセン病訴訟を通じ実名公表したことで、嫌がらせを受けたことなども説明した。その上で「実際に差別が現在も続いていることを実感している」と述べ、裁判を通してハンセン病問題が解決していくよう訴えた。

 同裁判の原告は、元患者の配偶者や子どもらで、16年2月に提訴した。隔離政策の根拠となった「らい予防法」が廃止されてから同年3月末で20年となり、民法の規定で損害賠償請求権が消滅するのを前に訴訟が提起され、県内の原告数が最多となっている。