沖縄の施政権が日本に返還されて15日で46年を迎えた。基地のない平和な沖縄を思い描いた「祖国復帰」だったが、国土面積の0・6%の沖縄に米軍専用施設の70・3%が集中する現実はいまだ続いている。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡っては、埋め立ての阻止を最大の公約とする翁長雄志知事に対し、日本政府は7月にも海域に土砂を投入する強硬姿勢を見せている。国策の強要と地元民意の分断という、国と沖縄のいびつな関係が浮き彫りとなっている。沖縄関係予算や米軍基地などについて振り返った。
27年間の米国統治によって、沖縄は本土よりも戦後復興が遅れた。復帰と同時に施行された沖縄振興開発特別措置法(現在の沖縄振興特別措置法、沖振法)に基づき、日本政府が沖縄関連の直轄事業や交付金をとりまとめてきた。5次に渡る振興計画による内閣府の沖縄関係予算は、2018年度までの総額で約11兆6800億円となっている。
高率補助を中心とした沖縄振興事業で道路やダム、港湾といった、経済活動の基盤となる社会資本の整備は進んだ。自立型経済の確立に向けた各種施策では、17年度の入域客数が過去最高の939万人を記録して1千万人台が目前となり、沖縄観光が手本としてきたハワイの観光客数を初めて上回った。那覇空港第2滑走路は2020年の運用開始を予定し、近隣のアジア諸国の成長力を取り込んだ人や物、情報の交流拠点として県経済は新たな可能性を見せている。
医療環境や生活水準の改善が進んだ一方で、1人当たり県民所得は復帰以降、全国最下位にとどまっている。復帰の年に44万円で全国の59・5%の水準だった県民所得は復帰後に差を縮めたものの、90年代以降は全国平均の6~7割程度で推移している。沖縄社会に貧困や格差が横たわり、振興の内実が問われる。
沖縄関係予算は、仲井真弘多知事(当時)が辺野古移設を容認した2013年に、安倍晋三首相が21年度まで3千億円台確保を表明した経緯がある。移設に反対する翁長県政が発足して以降も3千億円台は確保されているものの、18年度当初予算はラインぎりぎりの3010億円まで減額されている。第5次の沖縄振興計画に当たる「21世紀ビジョン基本計画」は10年計画を折り返し、復帰50年以降の振興を見据えた議論が始まっている。どのような自立の形を展望するか沖縄の構想力が問われている。