「小さい頃から一緒にいるから、自然と思いやりや優しさが育った」「困っている人に気付き手助けができる」。人工呼吸器を付けた湯地駿羽(ゆじはやと)君(12)の同級生の保護者は障がいのある子もない子も一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」の良さを口にする。
4年と6年で担任だった宮城正美教諭(53)も「障がい者への理解は教えるものではなく、一緒にいて感じていくもの」とその良さを実感している。
しかし、課題もある。
幼稚園から中学校の現在まで母三代子さん(43)は毎日、学校に付き添っている。学校側は「何かあれば保護者が対応してくれるのは心強い。お母さんの存在は大きい」と話す。
一方で三代子さんは「私は付き添いたかったし、それができる環境だからいいが、付き添いが原則となるのは違う」と強調する。「下にきょうだいがいたり、働かないといけなかったり、付き添いたくても付き添えない親もいる。それぞれの家庭の状況に合わせて対応してもらえれば」と望む。
県外では看護師を配置することで親の付き添いなしで普通学校に通っている医療的ケア児もいる。
学校現場も苦悩を抱える。宮城教諭は「インクルーシブな環境は本当は全ての子に必要。でもそれぞれの教師の思い任せになっているから全ての学校でできるわけではない。行政のサポートがないと続かない」と話す。
発達障がい児など支援を必要とする子どもは増えているが、それに対するヘルパーの数は十分とは言えない。沖縄の学校現場は全国一非正規率が高く、特別支援学級の担任は非正規であることが多い。宮城教諭は「新しいことに挑戦するには周囲を説得したり、時には引っ張ったりしないといけない。立場の弱い臨時の先生ではそれは難しい」と指摘し、専門人材の配置の必要性を挙げる。
駿羽君と同級生たち、保護者、教員たちが切り開いてきた沖縄のインクルーシブ教育。これからどう広げていくのかが行政に問われている。
(玉城江梨子)
(おわり)