<沖縄から育む市民力>2 共感から対話生む コザ高授業 生徒、行動動機付け


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 社会の一員として世界の課題に関わる「市民力」をつけようと県内小中高大の教員らと取り組む、琉球新報と沖縄キリスト教学院大学の共同企画「沖縄から育む市民力」。今回は、誰にも身近な教育をテーマに行われたコザ高校の我如古香奈子教諭の授業を紹介する。共感しやすいように世界の問題を身近に引き寄せ、対話を引き出す工夫を凝らして「自分も何かしたい」という生徒たちの気持ちを動かした。

世界中の子どもが学校に通えるようになるために、大切だと思うことを項目ごとに小さなカードにし、グループで優先順を考える生徒たち=4月、沖縄市のコザ高校

 コザ高校の我如古教諭は4月、世界の子どもたちの教育環境を知り、自分にできることを考えるワークショップを2年生の授業で行った。使ったのは国際的な市民団体が作り、世界中で数百万人が参加するプログラム「世界一大きな授業」。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」にもある「質の高い教育をみんなに」を達成するため世界中で実施されている。よりよい教育施策を求め政策提言までを見据えた内容だ。

 我如古教諭は生徒たちを4人グループにし「世界に小学校に通っていない子どもは何人いる?」「通えない理由は?」などの問い掛けから授業を始めた。

 「家の手伝い」「学校が遠い」「親も学校に行っていなくて、子どもにも行かなくていいと言う」―。生徒たちが首をひねりながら考え出した答えに、我如古教諭は「全部当たり」。さらにネパール語で水、毒、薬と書かれた容器の絵を掲げて「この中から薬を選んで」。「えー」「読めんし」などと声を上げる生徒たちに「字が読めないと命に関わる。求人票も読めず仕事もできない」と識字の重要性を気付かせた。

 終盤には、女子が教育を受ける権利を訴えてノーベル平和賞を受けたパキスタンのマララ・ユスフザイさんの受賞スピーチ映像を見せた。マララさんは当時17歳で生徒たちと同世代。授業後の感想には「自分と歳が変わらないのにすごい」(安慶名蓮さん)「自分も行動したい」(井口景介さん、山城貞智さん、新垣勇志さんら)など共感する意見が並んだ。中には「声という武器を使って世界に訴えるのがかっこよかった」(吉田妃伽さん)「友人に話すことが政府を動かすきっかけにもなる」(赤井莉子さん)と言葉の力を見いだした生徒もいた。

 グループ内で話し合い、全体に発表しながら展開する中で「みんなの意見を聞いて自分の考えが広くなって楽しかった」(齋藤紗樂里さん)「意見を出し合うと一人では浮かばない発想が出た」(宮城一織さん)など話し合いの意義を実感する声も上がった。我如古教諭は「話し合いは市民力の第一歩」と目を細めつつ「日常的に話し合いを取り入れ、慣れる必要がある」と指摘した。

◆生徒の変化 6割、主体的に

 ◇授業後アンケートでは「世界の実態をもっと知ろうと思った」「自分も行動したい」「友達や家族と話したい」などと主体的に動き出したい気持ちを書いた生徒が約6割に上った。

 ◇昨年のこの時期に2人程度だった現2年生のボランティア部員は現在26人に急増。うち14人はこの授業を受けた生徒だ。「何かしたい」という思いを行動に移す生徒が現れている。

◆2年生地理担当 我如古香奈子教諭/「地球市民」意識を形成

我如古香奈子教諭

 2年生の地理を担当している。地理を学ぶ意義の一つは、世界の実情を理解し地球の課題を考え「地球市民」という意識を育むこと。「恵まれた日本に生まれてよかった」ではなく「自分に何ができるか」と考えるようになってほしい。

 「市民力」の第一歩は話し合うこと。新指導要領でも「主体的・対話的」とうたわれているが、生徒たちはグループワークの経験が浅く、意見を言うことに慣れていない。それでも授業で発展途上国の実情を知ると「やばい」など声が上がった。言葉使いは平易だが自分なりにしっかり感じている。言葉のリストから自分の気持ちに合うものを選ぶなど、言語化しやすい工夫をすると「声や言葉を伝え合うことが世界を動かす」といった本質を突いた感想も出て、たった50分の授業でも興味・関心が向上した手ごたえがあった。

 ただ1回きりでは忘れてしまう。対話をし、地球市民としての力をつける授業を、年間を通して続けていきたい。


ワークシート

 

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