ひめゆり入門 感想から 文集27年分調査、資料集に


この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社
27年分の「感想文集ひめゆり」(手前)を分析し、一冊にまとめた資料集「館の宝物『感想文集ひめゆり』を開く」を手にする仲程昌徳さん=5日、糸満市伊原のひめゆり平和祈念資料館

 ひめゆり平和祈念資料館はこのほど、開館以来、国内外から来館した人たちの27年分の感想文集を分析した資料集「館の宝物『感想文集ひめゆり』を開く」を発刊した。著者は県女師・一高女ひめゆり平和祈念財団の仲程昌徳理事長。戦争体験者から10代まで、幅広い世代の来館者が書いた感想文にある共感や激励に加えて疑問、批判も含めて掲載し読み解いた。次世代へ沖縄戦の体験や教訓を継承するための視点を学べる一冊となっている。

 1989年に開館した同館には、2016年度までに50万件を超える感想文が寄せられた。感想文は証言員や学芸員らが編集して年1回、感想文集「ひめゆり」として発行している。仲程理事長は、感想文集の第1号から第27号を読み込み、今回の資料集に約160件を引用し分析を加えた。

 資料集の冒頭で引用した女性教員の感想では、もし当時の学徒の立場なら戦場への動員を拒否できたかを、生徒とのやりとりで考えたことを紹介した。生徒が「みんな残っているのに自分だけ帰れない」と率直に答えたのを聞いた女性教員は「『私なら拒否する』と今、頭ではそう考えていてもそうできない現状が、逃れられない状況があった」と実感したことを記した。この感想を踏まえ、仲程理事長は、来館者が戦時下の状況を想像し自分に置き換えて内省する場になっていることを指摘した。

 社会情勢が反映されている感想文も多い。東日本大震災後の福島原発事故後には「国、国策、政府の隠ぺい、まさに今起きていることに戦争当時の沖縄で起きたことを重ねています」といった声があったことも紹介した。日本のアジア侵略を批判する声や反日的だとする声も引用し読み解いた。

 仲程理事長は、感想文から読み取れることの重要さを強調し「これを入門書としてひめゆり平和祈念資料館のことを知ってほしい」と呼び掛けた。

 同資料集は、沖縄県糸満市伊原のひめゆり平和祈念資料館で販売している。価格は税込み1200円。問い合わせは同館(電話)098(997)2100。