「歌うはずだった歌を」 糸満高生、鎮魂の歌


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
73年前、ひめゆり学徒が口ずさんだ歌を心を込めて歌う糸満高校合唱部の生徒たち=23日、糸満市伊原のひめゆりの塔

 沖縄戦で亡くなった学徒や教師にささげようと、糸満高校合唱部が23日、糸満市伊原のひめゆりの塔でレクイエム・コンサートを開いた。当時の学徒と同年代の生徒9人が、73年前の卒業式で学徒が歌うはずだった校歌や「別れの曲(うた)」、解散命令が下り、死線をさまよう中で家族を思って口ずさんだ「故郷」など6曲を披露した。澄んだ歌声が響く会場で、涙を拭う元学徒や遺族らの姿があった。

 コンサートは、ひめゆり平和祈念資料館が同高に依頼して実現した。合唱部は2カ月間練習を積み、柔らかなハーモニーを披露した。歌い終えた生徒たちに掛け寄った高齢の男性は「姉が師範にいてね、18歳でした。本当にいい歌をありがとう」と礼を言った。

 真っ赤な目で必死に歌い上げた嘉数未来(みく)さん(16)は「学校に行ける、友だちに会える、ご飯も食べられる。当たり前だと思うことができない時代があった」と当時の学徒の置かれた状況に思いをはせた。

 資料館学芸員の古賀徳子さんは「歌を聴き、学友を思い出して泣く体験者の姿もあったが、高校生が歌う姿にはきっと希望を感じただろう。いい時間になったと思う」と元学徒らに思いをはせた。