分断に終止符、沖縄の未来へ 逃げずに覚悟の選択を 推進派も議論深めて 「辺野古」県民投票の会 呉屋守将顧問に聞く


この記事を書いた人 大森 茂夫

 名護市辺野古の新基地建設の賛否を問う県民投票の実現を目指す「『辺野古』県民投票の会」の賛同署名数が、活動締め切りの23日を前に6万筆余に達した。県内有権者の50分の1に当たる2万3千筆の必要数を上回り、県民投票実施が現実味を帯びてきた。県民投票の会顧問の呉屋守将氏(金秀グループ会長)に狙いなどを聞いた。

県民投票条例の制定を求める署名活動についてインタビューに答える呉屋守将氏=18日、那覇市の金秀本社

 ―県民投票を巡る方針の不一致もあり、オール沖縄会議の共同代表を辞めて市民運動に合流した。

 「特に1月の名護市長選の敗北が大きかった。翁長県政の4年間、首長選挙に負け続けてきた。選挙の争点にすることから逃げてきた陣営が、辺野古について暗黙の了解を得たといわんばかりのことを官邸を中心に喧伝(けんでん)する。本当にそうだと思うのであれば、そういう場を設けて県民の総意に耳を傾けるべきだろう」

 「やはり県民の意思を直接問う機会をつくることが我々の最大の武器であり、埋め立て承認撤回の有効な手立てになるというのが私の提起だった。知事選や国政選挙を通じて全県民的な民意は表されており、あえてリスクを冒すことはないという声もあった。オール沖縄会議の共同代表を辞めたのは、自分自身があえて『壊死(えし)』した部分であると引き受け、体全体にまひが広がる前に切って捨てた。そうすることで組織に緊張感を持ってもらうこともあった」

 ―政治の素人が集まった運動をどう見てきたか。

 「自分たちの将来のことは自らも関わって議論し考え、一定の結論も見たいという思いだと思う。マンパワーも金も圧倒的に足りない。でもその純粋さが伝わった。県民の中に凝縮された形で広がっている不満感、不安感が、署名が告知されるにつれて多くの賛同につながってきた。本当の意味でウイングの広いオール沖縄になってきた。そうした大きな分岐点に立つ市民運動だと思う」

 ―実施に向けての考え方は。

 「推進派が黙って、我々が一方的に票を伸ばして圧倒しても、それで本当に勝利とは言えない。彼らにも彼らなりの議論を深めてほしいし、深める中で矛盾点にも気が付くだろう。それは我々自身にもあるかもしれない。それこそ国政与党に辺野古埋め立て賛成の運動を盛り上げるように呼び掛けたい。我々もそれに負けずに運動をする。議論を活性化させることが何より大事だ」

 「実際の県民投票に当たって気になるのは設問だ。イエスかノーかのほかに、『分からない』といった選択肢は設けてほしくない。一人一人の県民がどういう気概と覚悟を持ち、子や孫の時代にどういう実績を残すのかを逃げ場を設けずに示してもらいたい。これは、ちょっと押し付けがましい問い掛けかもしれない。だけど、今を生きるウチナーンチュの一人としてやる責務があると思っている。県民がお互いにいがみ合い、分断された状況にこれで終止符を打ち、次の議論に進みたい」(聞き手 与那嶺松一郎)