迫る土砂投入、土壇場で知事が決断 慎重意見あるも知事の意思を尊重 辺野古きょう撤回表明


この記事を書いた人 アバター画像 桑原 晶子
27日に記者会見を行うと発表する翁長雄志知事=26日午後、県庁

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、翁長雄志知事は26日、建設に必要な埋め立て承認の撤回に向けた手続きを始めることを決めた。当初、7月前半とみられた撤回手続きの開始は、下旬までずれ込んだ。法律を所管する県の関係部署が慎重姿勢を崩さない中、辺野古海域への土砂投入が迫り、翁長知事が投入前の撤回に向けて、ぎりぎりのタイミングで決断した。

■慎重論
 26日午前から前日に続き、翁長知事と両副知事が三役会議を開き、最後の詰めの協議をした。県庁内は張り詰めた空気が漂い、日頃は報道陣が出入りしている三役室は締め切られ、この日は秘書課の許可を得た来客や県庁職員のみ出入りが許された。

 公有水面埋立法を所管する県土木建築部の上原国定部長は、撤回に向けた報道が過熱する中、記者団の取材に対し一貫して「土建部には何もない。全て知事公室が決めること」と距離を置いてきた。

 県が「最後通告」と位置付ける17日の文書は、知事公室と土建部の連名。前知事の埋め立て承認後に生じた事案である、軟弱地盤の対策やジュゴンなど絶滅危惧種の環境保全対策などが不十分であることなどを指摘し、沖縄防衛局に工事の即時停止を求めた。ただ、この後も土建部は、留意事項違反などだけを理由にした撤回には否定的な姿勢を崩さなかった。

 関係する他の部署も慎重姿勢を取り続けた。「農林水産部も、どちらかといえば環境部も、筋が厳しいと最初から引いていた」(県幹部)。知事周辺は知事の心情を酌み、各部局長に対し「知事の判断を尊重しなければならない立場だ」と強調した。

 翁長知事は26日の退庁時、待ち構える記者団に対し、翌日の記者会見の開催を伝え、「私の考えをお伝えする。詳細は会見で確認していただきたい」と答えた。ここ数日ずっとこわばっていた頬を緩ませた。

■天王山
 防衛局は、辺野古海域への土砂投入の予定開始日を8月17日と県に通知したが、台風の影響で予定より遅れる見通しとなっている。県は撤回までの聴聞に要する期間を約3~4週間と見込む。県が撤回すれば、政府は行政事件訴訟法に基づき執行停止を裁判所に申し立てる方針だ。裁判所は早ければ2週間程度で可否を判断するとみられる。土砂投入が遅れ、裁判所が執行停止を認めた場合、影響は限定的という指摘もある。

 「これまでの行政指導の延長線上にあるのかどうかがポイントだ」。防衛局幹部はこう話し、聴聞通知書に書かれる撤回根拠に注視する。県がこれまで主張してきた根拠の範囲内であれば、裁判を有利に進められるとの見通しを示した。

 「とんでもない隠し玉があれば困るが、到底想定できない」と高をくくる。天王山は撤回後に予想される県と国の裁判だ。県が裁判でいかに国に勝つ戦略を描けるかが焦点だ。翁長知事が27日の会見でこの点をどのように説明するのかが注目される。  (与那嶺松一郎、中村万里子、明真南斗、嶋岡すみれ)