教育
沖縄から育む市民力

<沖縄から育む市民力>4  声聞く姿勢大切に 学習の題材選ばせる アミークス幼稚園

◆子どもの自主性、どう育む?

 一人一人が社会参加をする力を付ける授業実践を紹介している琉球新報・沖縄キリスト教学院大学の共同企画「沖縄から育む市民力」は今回、10、11日に沖縄アミークスインターナショナル幼稚園(うるま市)で行われた5歳児クラスの授業を紹介する。子ども自身の興味関心を学びの出発点にし、指示をし過ぎず場をつくる教師の姿が、子どもの自発的な参加を引き出していた。


教員たちが手掛けたゴリラ(右)に歓声を上げる子どもたち=11日、うるま市の沖縄アミークスインターナショナル幼稚園

 2クラス29人の子どもたちが学びたいテーマに選んだのは「ゴリラ」。2人の担任と教頭のウェッブサエコさんは、ゴリラを介して言語、理科、算数を学び、最後にアート作品を作る2日間の授業を準備した。

 初日、子どもたちは約10人ずつ3グループに分かれ、3分野を担当する各教員がそれぞれグループに入った。ウェッブさんの担当は言語。「ゴリラと同じGから始まる言葉は何がある?」など子どもたちの言葉やイメージを引き出した。隣の教室でラッセル彩さん(31)は理科を担当し、動物の目や鼻の写真、鳴き声の音声から動物名を当てるクイズで体の違いや共通点を気付かせた。算数の石原昌歩(あきほ)さん(29)は、動物の体の大きさや数を比べて数の概念を引き出していた。

 今回のプログラムはレッジョ・エミリア・アプローチと呼ばれる幼児教育法を基に、ウェッブさんら3人が園の実情に合わせて練り上げた。鍵になるのは、大人が子どもの言葉を丁寧に聞き取り、子どもの自発的な動きを見守ることだ。活動中は随時写真を撮り、子どもの発言を記録する。後から大きな紙に張り出すことで教員、保護者もその様子を確認できる。

 この日、ラッセルさんと石原さんは別の教室で、それぞれゲームをしようと「2グループに分かれて」と呼び掛けていた。ラッセルさんの前では、てきぱきと指示する子どもが同級生を振り分けた。しかしそれぞれに希望があり、なかなか合意に達しない。石原さんの前では、一人一人が好きな友達とくっ付いたり離れたり、2本の列が生き物のように動いた。

 大人が指示を出せば子どもはその通りに動く。しかし担任2人はにこやかに見守った。「互いにコミュニケーションを取り、自分たちで解決してほしい」とラッセルさん。石原さんは「大人が口出しせず子どもの意見を聞く態度でいてこそ、子どもたちは生き生きと自分の気持ちを伝えるようになる」。数分後、子どもたちは無事グループを完成させゲームを楽しんだ。

 2日目は全員が一堂に会して、ゴリラをテーマにグループでアート制作をした。あるグループは紙やひもなど材料の色や手触りを確認し、毛糸でもこもこのゴリラを仕上げた。別のグループの男の子は「女の子たちはかわいいのを作る。自分はかっこいいのがいい」と1人で色紙を握りしめ、ゴリラの体の形を指1本まではさみで切り抜いた。ラッセルさんは「ゴリラについて多角的に学んだから表現も広がった」と多様な作品に目を見張った。

 子どもたちが作品を発表し合った後は、教員たちが「本気で」作った人間の大人ほどの大きさのゴリラが登場。教室は沸き上がり、子どもたちはわれ先にと手を挙げ質問が続いた。石原さんは「大人の作品が刺激になり、いつもは発言しない子どもも質問していた。子ども自身が選んだゴリラがテーマだったからこそもり上がったと思う」と手応えを語った。

◆教頭 ウェッブサエコさん 活動計画に子の希望反映


 プログラム実施前、5歳児クラスの担任2人と何が子どもにとって大切かを話し合った。一人一人の子どもに敬意を持ち、子どもを活動の中心に据えるという価値観を共通して持っていることが確認でき、それを実現する手段としてレッジョ・エミリア・アプローチが合致した。ずっとやりたかった教育法だが、この話し合いを経て初めて、この園で実践できた。

 子どもの声を大切にする活動は普段からやっていることだが、日常では丁寧に共有したり振り返ったりすることは難しい。特定のプログラムを行うことで、個々の考えや経験を言葉にして話し合い、振り返りをするなど自分たちの学びも大きかった。担任2人の力とチームワークがあったからこそ実践できた。

 幼稚園にも定められた教育要領があり、それに沿って活動する必要がある。今回の実践を通して、子どもの希望に沿った活動をカリキュラムに落とし込むことができることも確認できた。年間を通して実践できればと思っている。




◆痴漢えん罪題材 世界の司法比較 来月26日、公開講座

 琉球新報と沖縄キリスト教学院大学の共同企画「沖縄から育む市民力」は第2弾公開講座として8月26日、痴漢えん罪事件を切り口に司法の現実を訴えた映画「それでもボクはやってない」を題材に国際比較ワークショップ&お話会を開く。西原町の沖縄キリスト教学院大学で午後1時~4時。参加無料。

 この映画を東アジアの大学生がどのように受け止めたかを調査した東京大准教授の阿古智子さんを講師に迎え、日本の現状を知り、私たちが望む社会のあり方を考える。問い合わせは琉球新報文化部(電話)098(865)5162。


 


ワークシート

 


①授業の流れと子どもの発言


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②授業概要


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