沖縄美ら島財団総合研究センターが、イルカの精子を凍結保存する取り組みを進めている。凍結保存した精子を活用して人工授精を行い、2~3年後にはイルカの子どもを出産することを目標にしている。イルカの精子を凍結して長期的に保存する技術をすでに確立している。イルカは個体数の減少が懸念されているほか、国際的にも野生のイルカを捕獲することが困難になっている。
精子の採取と凍結はミナミバンドウイルカとオキゴンドウで実施している。採取した精液に特殊な希釈液を混ぜ、急激な温度変化の影響を受けないように時間をかけて冷却していく。最終的には液体窒素を使ってマイナス196度で凍結する。通常は1週間ほどで死んでしまう精子は、凍結保存することで10年以上も維持することが可能になるという。今後は凍結した精子を解凍し、人工授精に適した状態で生存しているか確認する。
イルカの精子の凍結保存は国内外で研究が進められており、人工授精の成功事例もある。同センターは数年前から凍結保存の実現に向けた研究を開始し、海外の水族館の協力も受けながら今年の春ごろに技術を確立した。オキゴンドウは全国的にも個体数が少なく、ミナミバンドウイルカは国内では海洋博公園のみで飼育している。凍結した精子を活用して人工授精し、新たな個体を産むことで、野生のイルカの保全や水族館での持続的な展示が可能となる。
同センター動物研究室の植田啓一室長は「最近は野生のイルカを導入することが難しくなっている。人工授精でイルカの出産につなげることで、水族館のイルカを維持することができる。子どもや孫たちの世代まで水族館のイルカを楽しんでもらえるはずだ」と強調した。