地域特性生かす 沖縄の産業まつり 海外展開も視野


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 第42回沖縄の産業まつり2日目の20日は晴天の下、午前中から多くの来場者でにぎわった。奥武山公園では復活した伝統蒸留酒「イムゲー(芋酒)」の試飲や県産牛など自慢の特産品を使った一品を販売する飲食店に長い列ができた。県立武道館では新エネルギーや新機軸を打ち出した商品説明に熱心に耳を傾ける姿もあった。産業まつりは21日までで、午前10時から屋内展が午後7時まで、屋外展が午後8時まで開かれる。

◇海水と淡水で発電 塩分の差利用

海水と淡水を活用した発電システムを紹介する企業や大学の関係者ら=19日、那覇市の県立武道館

 宜野湾電設(宜野湾市)と正興電機製作所(福岡市)は、うちなー電力(那覇市)や琉球大学、山口大学と協力して、海水と淡水を活用した発電システムの開発を進めている。専用の機器に海水と淡水を流し込むだけで電気を生み出すことができ、周囲を海に囲まれた沖縄やアジアの島しょ地域での活用が期待される。

 開発するのは逆電気透析(RED)発電というシステムで、海水と淡水の塩分濃度の差を利用して電力をつくる。イオンを浸透させる膜を配置した機器に海水と淡水を流し込むと、塩分濃度の違いから内部でイオンの流れが起こり、発電につながる。海水と淡水が混在する河口などに設置することを想定している。機器は太陽光や風力の発電設備より小規模になっており、都市部での活用も視野に入れる。

 RED発電は太陽光や風力と異なり、海水と淡水があれば安定的に発電ができる。同様の発電機器の開発は欧州でも進められている。REDの発電は気温が高い地域の海水を使うことで発電効率が上がるといい、海水温が低い欧州よりも沖縄の方が環境に恵まれている。

 開発に携わる山口大学大学院の比嘉充教授は「海水と淡水が確保できる場所であればどこでも機器を設置ができる。環境負荷はゼロで機器もコンパクトなので、さまざまな場所で活用できる」と強調した。開発プロジェクトのリーダーを務める琉球大学大学院の小山聡宏氏は「自然環境に左右されない再生可能エネルギーで、東南アジアの島しょ地域にも輸出できる。一般家庭にも設置可能なので、停電時の予備電源としても利用できる」と話した。

◇ひと味違う三線紹介 就労支援施設と協力

開発した三線とピックを手に取り音色を響かせるくちぶえ三線工房の新里紹栄代表=20日、那覇市の県立武道館

 くちぶえ三線工房(うるま市、新里紹栄代表)は、歌の雰囲気によって使い方を変えることができるピックと、胴をポリエステルで作った三線を開発し、沖縄の産業まつりで紹介した。新里代表自ら三線とピックを手に取り、兄弟小節などの民謡を披露して三線の音色を会場に響かせた。

 ピックは110度、90度、70度、50度の四つの角度をつけ、歌によって使い分けができるよう工夫した。弦にひっかかりにくい110度の鈍角はカチャーシーなどの早弾きに適し、清い音が響く50度の鋭角は情け歌に適する。

 三線は胴をペットボトルと同じポリエステルにしたことで太陽の熱や水に強くなり、エイサーの地謡など屋外で三線を弾く時に雨が降っても耐久性がよくなった。従来の人工皮の三線は、音を吸収してしまうナイロン製やテトロン製など、布製の素材が多かったという。ポリエステル製は音の余韻が続くという。

 新里代表は「余韻が響き、本革に近い音を出せる。テントや猫皮など色んなもので実験して、ポリエステルにたどり着いた」と話した。

 写真や文字などのデザインを入れることもでき、お祝いの際などの贈り物にもできる。

 三線とピックは、新里代表が相談役を務めるうるま市の「就労支援施設A型・移行くちぶえ」のメンバー6人と協力して作った。

◇「くら」でハイボール 泡盛飲み方提案

オリジナルジョッキでくらハイボールを紹介するヘリオス酒造の渡嘉敷吏氏=20日、那覇市の奥武山公園

 ヘリオス酒造(名護市、松田亮社長)は、樽(たる)貯蔵の泡盛「くら」を使ったハイボールで、泡盛の飲み方を提案した。沖縄の産業まつりでは「くらハイボール」のほか名護市勝山産シークワーサーと本部町のアセロラを使ったハイボール3種類を提供した。初日だけで100杯を売り上げ、来場者の注目を集めた。

 泡盛の香りをほのかに残しつつ、樽(たる)貯蔵の持つ甘い風味が持続するのが特徴だ。

 新たに作ったオリジナルジョッキは産業まつりで初お披露目した。「くらハイジョッキセット」として、ジョッキ、三年古酒くら、炭酸水のくらハイボールセットを販売した。

 現在、工場がある名護市内の飲食店100店舗で「くら」を提供して認知度向上を図っているが、今後オリジナルジョッキも店に置いていきたい考えだ。くらハイボールを1杯無料にするなどのキャンペーンも行い、県民だけでなく海外からの観光客にも周知する。

 同酒造所の渡嘉敷吏氏は「くらハイボールを突破口にして、名護でしか飲めないお酒として広めていきたい」と話した。