帆足さんは沖縄戦当時、陸軍海上挺進隊第2戦隊の少尉として沖縄県の阿嘉島に駐屯し、島の住民と交流を深めた。特攻艇で出撃し戦死したとされているが、遺骨は見つかっていない。
遺族は戦後、帆足さんの足跡をたどって何度か沖縄を訪れた際に、垣花さんらの家族と出会った。垣花家は帆足さんと交流があり、遺族は帆足さんとの思い出話を聞くうちに、垣花さんの名前は帆足さんの「孝」の字を取って名付けられたことなどを知った。それから帆足さんの母ハヤさんが、感謝を込めて70年から本の寄贈を始めた。
ハヤさんが亡くなった後も家族が遺志を継ぎ寄贈を続けていたが、ハヤさんの娘・多恵子さんも92歳になり、10月10日を最後の寄贈とすることになったという。多恵子さんも寄贈式を控えた9月28日、息を引き取った。
贈られた本は現在までに5千冊を超え、阿嘉小中学校図書館の一角に「帆足文庫」が置かれている。ジャンルも幅広く、最新刊の本もあり、子どもたちに人気があるという。
最後の寄贈式で垣花さんは、児童生徒に図書寄贈の経緯を説明し「帆足さんは夢をかなえられず無念だっただろう。多恵子さんも家族を戦争で亡くし、平和な世界を望んでいたはず。皆さんには平和な世界を実現してほしい」と語り掛けた。
阿嘉中3年の当間大聖さん(15)は「(図書寄贈の経緯を)初めて知った。読書を通じて夢の実現を頑張りたい」と話した。
(嘉数陽)