緊急連絡体制「不備」43% 県内学童防災アンケート 専門家「保護者と取り決めを」


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 共働きやひとり親家庭など小学生を放課後に預かる「学童保育」(放課後児童クラブ)の防災対策について、琉球新報と県学童保育連絡協議会(謝花博一会長)が30日までにアンケートをしたところ、緊急時の連絡体制を整備し保護者と共有する対応ができていない学童が43%あり、災害発生時に児童引き渡しの取り決めがない学童が27%あった。東日本大震災では、岩手県の保育園で親に子どもを引き渡した後に親子が津波に巻き込まれた事例もあり、専門家は「災害が起こった時の保護者との取り決めや相互協力が必要だ」と指摘している。

 アンケートは県内447学童に郵送し、195カ所から回答を得た。防災マニュアルは89%の学童で作成していると回答したが、連絡体制が整っていない状況から、マニュアル自体が不十分の可能性が高い。民設民営の学童が9割を占める県内で「多忙で防災まで手が回らない」という声もあり、マニュアルの作成や防災対策が、担当者の意識によってばらつきがある。

 取り決めがあるとした学童でも「保護者に連絡し、速やかに引き渡す」「早めの迎えを依頼」などと、引き渡すことを前提としている回答も多い。防災士で社会福祉士の稲垣暁さんは、車で迎えに行く親の車両で渋滞が発生する可能性もあるとし、「保護者に引き渡しをする、しないの基準をつくることが大事だ」と述べた。

 アンケートからは「マニュアル作成に協力してくれる機関や防災に詳しい知識を持つ人とのつながりがなく困っている」とする学童もあり、市町村など関係機関と連携不足で、防災対策が学童任せになっている状況がみられる。

 NPO法人県学童・保育支援センターの垣花道朗理事は「民設では防災対策の内容について、第三者が評価できていない。対策の具体的内容についても精査が必要だ。子どもの安心安全を行政の関与が少ない民設民営の学童でどう守っていくべきか、課題は多い」と指摘した。
 (関口琴乃、新垣梨沙、知花亜美)