サンゴ保全で論文賞 恩納漁協の比嘉さん 非研究者で初


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日本サンゴ礁学会の論文賞を受賞した恩納村漁協参事の比嘉義視さん=琉球大学

 「沖縄の豊かな海を取り戻したい」。サンゴを保全するため20年前から養殖に取り組む、恩納村漁協参事の比嘉義視さん(54)を中心とする研究チームが執筆した論文が11月、日本サンゴ礁学会の論文賞を受賞した。筆頭執筆者を非研究者が務めた論文が、同賞を受賞したのは初めて。論文は、生存率が高く、簡易な方法での養殖法をまとめたほか、その養殖法の有効性を科学的に証明した。比嘉さんは「大きな転換点になると思う。これを機にサンゴ養殖がさらに進む」と自負した。

 同漁協は1998年、国内で初めて「サンゴひび建て式養殖」を始めた。「ひび建て式」は、海底に打ち込んだ杭の上にサンゴを乗せて養殖する手法。他の方法に比べ大規模な養殖が可能で、複雑な器材も必要ない。2017年3月までに約2万4千群体の養殖に成功した。

 比嘉さんらの取り組みに県や大学の専門家らが加わった研究チームは、約2万4千群体のサンゴの産卵数が年間約57億個、そのサンゴに棲(す)み込む魚が約67万匹いたとの推定値を出し、「ひび建て式」の有効性を裏付けた。16年夏には、世界各地で高水温による大規模な白化現象が見られたものの、恩納村沿岸で調査した結果、天然サンゴよりも養殖サンゴの生存率が高かったことも証明した。

 「一般的には天然サンゴの質のほうが高いと思われているが、実際はあまり変わらない」と比嘉さん。2070年代には世界中のサンゴが消滅するとの予測もある中で「人の手で育てられることが分かれば、希望が持てる」と展望した。
 (砂川博範)