泡盛の海外展開 輸出拡大へ企業協力 知名度向上への戦略課題


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 出荷量が減少傾向にある琉球泡盛の消費拡大を図るため、海外輸出を進める動きが出ている。官民一体となって泡盛の販路拡大を後押しする「琉球泡盛海外輸出プロジェクト」が設立されたほか、沖縄県内酒造所や企業が協力して泡盛を海外に輸出する取り組みも行われている。関税の障壁や知名度の低さなど海外展開には課題もあるものの、関係者らは「泡盛には大きな可能性がある」と期待を寄せている。

国内出荷は減少

 泡盛の総出荷量(国内)は沖縄ブームなどが追い風となった2004年の2万7688キロリットルをピークに13年連続で減少している。17年の総出荷量は1万7709キロリットルで、04年比で36%も減少した。県酒造組合の土屋信賢専務理事は「さまざまなアルコール飲料が県内に入ってきたことで消費者の好みが多様化したほか、女性や若者のアルコール離れや飲酒人口の減少が影響している」と分析する。

 海外への輸出量は11年の約18キロリットルから17年は約29キロリットルに増加しているものの、増減を繰り返している状況で大きく伸びてはいない。泡盛の総出荷量に占める海外輸出の割合は0・2%程度にとどまっている。泡盛の海外輸出は酒造所が個別で行っているケースが多いといい、土屋専務理事は「海外へ出る体力がない事業所が多く、個別の酒造所で輸出をやったとしても限界がある」と指摘する。

中国、アイスランド

 泡盛の輸出拡大につなげるため、県内の酒造所や企業が協力体制を築く動きが出ている。ビンコウHDと瑞穂酒造、南島酒販は泡盛の原酒を使った「沖縄白酒」を中国向けに輸出する。「白酒」は中国で多く飲まれている酒類で、日本酒などとは異なる新たなマーケットに切り込むことを視野に入れている。

 忠孝酒造と久米島の久米仙、瑞泉酒造の酒造3社はブルーシップ沖縄と協力して泡盛をアイスランドに売り込む。泡盛の認知度を高めて将来的には欧州各地に輸出することを目標としている。泡盛の海外輸出事業に関わる沖縄総合事務局の担当者は「複数の企業が協力することは今後の海外展開に向けたモデルとなるはずだ」と期待を寄せる。

外国観光客へ発信

 県内の酒造関係者や企業、行政の関係者らで組織する琉球泡盛海外輸出プロジェクトも始動しており、泡盛と食事の組み合わせを提案するなど、販路拡大に向けて議論を深めている。同プロジェクトでは泡盛の海外輸出量を17年の約29キロリットルから22年に約100キロリットルまで拡大することを目標に掲げる。

 泡盛は海外へ出荷すると関税が課せられて割高になることや、日本酒など海外に広まっている国産酒と比較すると知名度が低いなど、輸出に向けた課題も残る。一方で沖縄を訪れる外国人観光客は増加しており、海外へ泡盛を発信する機会は多くなっている。県酒造組合は外国人観光客への調査を通じて海外展開の戦略を立てる方針だ。土屋専務理事は「糖質ゼロや低カロリーなど健康面でのアピールもできる。沖縄の優位性を生かして泡盛の良さをもっと伝えていく」と強調した。
 (平安太一)