【名護】「地方自治が殺された。絶対に許さない」「なぜこんなことができるの」。沖縄県名護市辺野古の新基地建設で、沖縄防衛局が埋め立て土砂の積み込みをわずか2日足らずで再開した5日、名護市安和の琉球セメント前には市民が次々と駆け付け、抗議の声を上げ互いに手を取り合い人間の鎖となって座り込んだ。午後3時、機動隊員が排除を始めると、数分で市民を排除、歩道上に隔離した。市民らが涙を流し、拳を振り上げて訴えた民意は、土砂を船に運ぶベルトコンベヤーの稼働音にかき消された。
午後2時すぎ、辺野古に向け土砂を運搬する船が桟橋に着岸。数分後には機動隊車両が次々と琉球セメントの敷地内に入り、隊員約80人が市民約40人の前に立ちふさがった。機動隊は工事車両の出入り口付近に柵を設置、排除した市民を柵と機動隊員で取り囲み、抗議活動を封じた。
那覇市の主婦比嘉多美さん(66)は機動隊の壁に包囲され「どうして」と漏らし、号泣した。悲しみと怒り、悔しさ。さまざまな感情があふれ出し涙が止まらなかった。「国策なら県条例は無視していいのか。県民は何度も何度も踏みつぶされ、虐げられてきた。私たちは国民じゃないのか」
防衛局は堆積場に積んでいた土砂は搬出せず、採石場から直接運び入れた。約2時間にわたり、大型トラック178台がベルトコンベヤーに土砂を運んだ。「あり得ない。こんなばかなことがあっていいのか」。ひときわ大きな声で抗議していた名護市の佐々木弘文さん(42)は目の前に広がる光景に怒りを抑えきれなかった。「県が行政指導して立ち入りを求めている中で、それを無視し、すり抜けるような形で強行する。国が地方自治を殺した」と語気を強めた。
午後5時16分、市民が厳しいまなざしを向ける中、埋め立て土砂を積んだ船が沖合へと出港した。