【島人の目】沖縄をこよなく愛した男


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 つい最近のことだ。知人に紹介された書籍を探しにリトル東京の「紀国屋書店」まで出掛けた。目当ての書籍が見当たらなかったので、代わりに評論家の宮家邦彦氏の新書「AI時代の新・地政学」を買って読んだ。AIとは「人工頭脳」のことである。新書はAI時代を迎え、従来の地政学の常識が大きく書き換えられていく様を読み解いたものだ。随分、難しい本を買ったものだとあきれたが、とんでもない読みだしたら止まらないほどにユーモアたっぷりで興味深い内容だった。新潮新書で今年10月に発売、「週刊新潮」で連載していたコラムから抜粋し、再編集したものとなっている。

 宮家氏は東京大学を卒業後、外務省に入省したもともとは外交官で、現在はシンクタンク「キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)」の研究主幹だ。NHKの「日曜討論」での理路整然と、歯切れの良い語り口に、普段から興味深い方だなと感じていた。

 同新書を読んでいるうちに気付いた。宮家氏の岳父は外務省で沖縄返還交渉に携わり、「鬼の千葉」と呼ばれた外交官の千葉一夫氏である。千葉さんの外交官人生は、NHKでドラマ化され、映画にもなった。宮家氏は千葉氏の娘婿で、千葉さんの息子、ロサンゼルス総領事の千葉明氏とは義理の兄弟にあたる。

 宮家氏が新刊の最終章「ちょっと変わっているが、素晴らしい国」の中に「沖縄をこよなく愛した外交官の物語」がある。それには「個人的な話で恐縮だが、わが家は沖縄と深いご縁がある」と明記しており、岳父にあたる一夫氏と外交官だった自身が、沖縄の負担軽減を常に考えていた時代を考証している。

 北米沖縄県人会の理事・役員には政治的な問題には関与しないという条件がある。しかし、沖縄に関する土地問題で日本政府は随分、不条理だなと思うことが多く、辺野古のような素晴らしくきれいな海をどうして破壊しなければいけないのかと考えると、胸が痛む。
 (当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)