米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、政府が14日に辺野古沿岸部への土砂投入を始める方針であることを受け、沖縄県は12日、沖縄防衛局に工事の即時中止を求める行政指導文書を提出した。一方、同日に上京した玉城デニー知事は13日に菅義偉官房長官や岩屋毅防衛相と会談し、土砂投入を断念するよう求める。
県は行政指導文書で埋め立て承認撤回の効力を止めた国土交通相の決定は「違法で無効」として工事を続ける権限はないと訴えた。また仮に撤回の効力がないとしても、埋め立て用土砂の性質や搬出場所、経路に問題があると、初めて指摘した。承認時の留意事項などに違反しており「工事の続行は許されない」と強調した。松島良成土木整備統括監が12日、防衛局を訪れて文書を直接手渡した。
防衛局はこれまでも県からの再三の指導に従ってこなかった経緯がある。12日に県庁で説明会を開いた県辺野古新基地建設問題対策課の多良間一弘課長は、防衛局が今回の指導に従わなかった場合「審査中の国地方係争処理委員会や今後の裁判で間接的証拠となる」と述べた。
一方、土砂投入に向けて防衛局は今後、土砂を陸揚げしてダンプトラックで辺野古崎付近まで運び、14日にブルドーザーで海に土砂を押し入れる計画だ。
土砂検査「必要」
県は行政指導文書で名護市安和から搬出された土砂について「土砂投入前にされるべき検査を経て有害物質を含まないと承認されたものではない」と指摘し、投入は許されないと主張した。土砂の性状検査結果が示されていないとして県が防衛局に指導したのは今回が初めて。
県によると、一般的に埋め立ての際に提出する申請書には土砂の性状検査の結果が添付されている。だが防衛局が県に提出した申請書には購入土砂についての検査結果がなく、代わりに「購入時に確認する」と記載されている。県はこの記述を前提に埋め立てが承認されたことから、土砂投入前に性状検査の結果が提出されるべきだとの認識だ。
しかし12日までに防衛局から提出されていないという。このため県は埋め立て承認の根拠である公有水面埋め立て法の審査基準に合わないと指摘している。
県は沖縄防衛局が埋め立て用土砂の搬出に名護市安和の桟橋を使った問題について県の変更承認を受けないまま搬出場所を変更しているとして、県が埋め立て承認の際に付した留意事項に違反していると行政指導文書で指摘した。併せて、土砂の採取場所についても問題視した。県が土砂の搬出場所や採取場所について指摘したのは初めて。
搬出場所を問題視
県は、防衛局が県に提出した埋め立て用土砂に関する資料には、本部地区から埋め立て用土砂を搬出する際は本部港を使うと記載されていると指摘し、名護市安和からの土砂搬出を問題視した。県が付した留意事項では、県の承認を得ない限り土砂の搬出場所は変更できないと記されている。
また、防衛局は土砂の採取場所について「本部地区」と「国頭地区」のみを指定していた。
だが今回、名護市安和から搬出された土砂について防衛局は採取場所を県に報告していない。
県は搬出された土砂が「本部地区」「国頭地区」以外のものだった場合は県の変更承認を得ていないため、留意事項に違反していると指摘した。