『絵で解る琉球王国 歴史と人物2』 琉球歴史の豊かさ わかりやすく


社会
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『絵で解る琉球王国 歴史と人物2』JCC出版部著、JCC美術部画 井上秀雄監修 JCC出版・1782円

 歴史人物をビジュアル化し琉球の歴史がわかりやすく書かれた人気作品の第2弾である。

 今回も前作と変わらず歴史人物の肖像画が描かれ、彼ら・彼女らに親しみが持ちやすい内容である。また、その人物に関わる遺跡の写真などもふんだんに使用されているところも興味を引き付けるものとなっている。

 今回は琉球の初代の王とされる舜天、歌三線の祖とされるアカインコ、世界遺産である園比屋武御嶽(そのひやんうたき)石門を建造した竹富島出身の西塘(にしとう)、1500年頃に与那国島を治めたといわれる女性首長のサンアイイソバなど伝説上の人物とされる人物も登場する。

 『中山正鑑』といった首里王府の歴史書をベースとしながらも、彼らにまつわる伝承や口碑、そして近年の研究の成果もおりまぜて人物が解説されている。そのため彼らの多様で魅力的な人物像が描き出されている。

 また護佐丸・阿麻和利の乱や「江戸上り(江戸立)」などが大型の絵巻物として描かれた項は力作である。人物のみならず琉球の歴史そのものが魅力的にビジュアル化されているのもうれしい。

 私が最も注目した点は、琉球を出自としない人物が多く登場しているところである。

 尚巴志をはじめ第一尚氏の王を支え王府の発展と安定に貢献し、龍潭(りゅうたん)の建造にも関わった懐機。尚泰久から尚真まで第一・第二尚氏王統の下で、仏教を広め日本との外交にも活躍した芥隠承琥(かいいんしょうこ)。1816年に琉球に来航し、西洋に「武器のない国」として琉球を紹介したバジル・ホール。日本へ来航する前後に琉球へ来航し、琉球の近代国際社会への扉もこじ開けたペリー。

 彼らが登場することによって、編集後記にもある通り琉球・沖縄には「小さな島の中に、あふれんばかりの歴史が詰まっている」ことがわかるだろう。

 ビジュアルが大きな魅力であるが、何よりも登場人物の豊かさにより、琉球の歴史の豊かさが楽しめる作品である。特に子どもたちには読んでほしい。そして足元の歴史の豊かさに気付く一歩としてもらいたい。

(大城航・沖縄歴史教育研究会)

 

絵で解る 琉球王国 歴史と人物
JCC出版部
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