難病越えイブの贈り物 元牧師の新垣さん、念願の礼拝に 病院スタッフ チーム作り移動支援


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妻の光子さん(右)と手を取り、礼拝参加を喜ぶ新垣善永さん=23日、北中城村の沖縄世の光教会

 クリスマスを前に、一人の男性の願いがかなった―。全身の筋肉が萎縮する筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患い、沖縄市内の病院に入院する新垣善永さん(80)は23日、病院スタッフの協力を得て念願だったクリスマス礼拝に参加した。「もう一度教会に行きたい」。元牧師の新垣さんの希望を聞き、病院スタッフが実現に向けて本人と共に練習を重ねてきた。スタッフの「病気でも、その人らしい人生を長く過ごしてほしい」という思いが実現につながり、新垣さんは両手を上げて喜んだ。

 ALSは全身の筋肉が徐々に萎縮し動けなくなる病気で、自力での食事や呼吸が困難になる。24時間人工呼吸器を必要とし、ベッドの上で1日の大半を過ごす新垣さんは、2016年にALSを発症して以来、クリスマス礼拝には参加できていなかった。

 同院は新垣さんの要望に臨床工学技士や理学療法士、言語聴覚士、看護師、医師ら約10人がチームを作り、この日に備えた。移動練習はベッドから車いすに移ることから始まった。呼吸に必要な加湿機能がある人工鼻も院外から借り、練習を重ねた結果、車いすで移動できる時間も5分、10分と延びていった。21日には、実際に車に乗り、教会までの道のりを確かめた。

 23日午前、病院スタッフと共に北中城村の沖縄世の光教会へ出発した。教会へ足を踏み入れると、礼拝参加者に笑顔で迎え入れられた。同村の養護施設から妻光子さん(84)も駆け付け、「来られてよかったね」と優しく手を握った。賛美歌の合唱が始まると、新垣さんはじっと耳を傾けた。時折「うん、うん」と思い出すようにうなずくと、その頬を涙が伝った。 隣で様子を見守った光子さんは「とてもうれしい。夫もとても喜んでいる。スタッフの皆さんに感謝したい」と笑みを見せた。新垣さんの妹平良光子さん(73)も参加し「一緒にこの日を迎えられてうれしい。夢のようだ」と喜んだ。

 同院では、2年前からALSをはじめとする外出が困難な患者の要望を聞き、実現に向けた支援をしている。内科医の大橋まゆみさん(50)は「目標ができると、当日に向け本人もリハビリを頑張り、表情も生き生きとしてくる。少しでも楽しい時間を過ごしてほしい」と話した。

 教会では「会えてうれしい」「これからもお元気でね」と、礼拝参加者から温かい言葉が掛けられた。新垣さんに、一足早いクリスマスプレゼントが届いた。
 (吉田早希)