米軍普天間飛行場の移設を巡り、仲井真弘多元知事が沖縄県名護市辺野古の公有水面埋め立てを承認してから27日で5年が経過した。この間、2度の県知事選が実施され、いずれも辺野古新基地建設阻止を掲げる候補が当選したが、安倍政権は「辺野古が唯一の解決策」との考えを崩さない。県内の反発が根強い中、政府は今月、埋め立て土砂の投入に着手した。計画は当初より大幅に遅れ、政権が移設を進める大義名分とする「普天間の危険性除去」の道筋は見えない。
2013年に政府が発表した現行計画では、普天間飛行場の返還期日は「2022年度以降」とされている。同年末には仲井真元知事が埋め立て申請を承認し、移設事業が動き出した。14年にはボーリング調査が始まったが、同年11月の知事選で「あらゆる手段を用いて新基地は造らせない」と公約した故翁長雄志氏が仲井真氏を破り、政府と県が辺野古を巡り対立する局面に入った。
防衛省の当初計画では、埋め立てに要する工期は5年、その後3年の施設整備を経て、辺野古の基地が完成する見通しだった。
だが、反対の民意を背に翁長氏が15年10月に埋め立て承認を取り消し、和解協議なども含めて幾度も政府は工事中断に追い込まれた。
取り消しの違法性を巡る法廷闘争は16年12月の最高裁判決で県が敗れる判決が下されたが、その後も県は新基地建設阻止に向けた対抗策を検討。翁長氏が急逝した今年8月、その遺志を受け継ぐ形で県は承認撤回に踏み切った。
9月の知事選では翁長氏の路線を継承した玉城デニー氏が大勝し、再び民意が示されたが、政府は行政不服審査法を使って止まっていた工事を再開できる環境を整え、今月14日に土砂投入に踏み切った。
現在土砂が投入されている辺野古側海域の埋め立ての工期は20年7月までとなっている。その後は大浦湾側での埋め立てが予定されるが、「軟弱地盤」の存在も指摘され、工事が長期化する可能性もある。
26日、県議会与党による抗議・要請の場で、沖縄防衛局の担当者は工期について「確たることを申し上げるのは難しい」と述べるにとどめた。
仲井真元知事と安倍晋三首相による普天間飛行場の「5年以内の運用停止」の約束も形骸化した。埋め立て承認から5年たってもなお、普天間返還の出口は見えない状況だ。