戦没者身元は特定できず 沖縄戦遺骨DNA 厚労省、84人鑑定


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
遺骨を確認する調査員ら

 【東京】厚生労働省は26日、身元が分からない沖縄戦の戦没者遺骨84人について、犠牲者286人の遺族の検体とDNA鑑定したが、血縁関係がある遺骨は特定できなかったと発表した。検体を提供した遺族には21日付で結果を郵送し、通知した。他の犠牲者29人の遺族からも検体が寄せられており、本年度中に鑑定し照合する。県が保管している500人以上の未焼骨の遺骨を今後DNA鑑定するかについては、同省は専門家の意見を聞いて年度内に対応を決める。

 今回の鑑定は遺骨の歯を検体としたが、既に対象拡大を決めた四肢骨も含めて鑑定するかどうかについては、「戦没者遺骨のDNA鑑定人会議」など専門家の意見も踏まえて年度内の検討にゆだねるとした。

 今回の鑑定は、従来の照合対象を軍人・軍属から民間人にも拡大して実施した。厚労省は引き続き申請者の検体提出を受け付ける。厚労省は血縁関係が特定に至らなかった理由として「高温多湿の土地で長期間経過した遺骨は保存状態が悪く、鑑定に必要なDNA型が十分抽出できない遺骨が多い」と説明した。検体提供の遺族が戦没者から遠い親戚の場合、判定が難しいことも挙げた。

 厚労省は2003年度から戦没者遺骨のDNA鑑定を実施している。沖縄では16年度に那覇市真嘉比や浦添市経塚の4地域で収集した遺骨75人について鑑定した。17年から浦添市前田や糸満市米須、同市喜屋武など6地域を加えた10地域の遺骨を対象としている。

◆県内遺族 結果に落胆/他の遺骨に望み託す

 沖縄戦の戦没者遺骨84人分をDNA型鑑定したものの、血縁関係を特定できなかったことについて、申請した県内の遺族には落胆の声が広がった。ただ、収集されて身元が分かっていない他の遺骨から見つかる可能性もあるとして今後に望みを託した。

 沖縄戦で伯父の宮城政保さんを亡くした古謝初恵さん(55)=嘉手納町=の下には、厚生労働省から「血縁関係は特定できなかった」との封書が届いた。古謝さんは昨年、父の宮城政吉さん(91)と共にDNA型鑑定を申請し、検体を提供した。厚労省の通知に「特定できればと思っていたので残念」。ただ、政保さんが埋葬されたという糸満市真栄平は、今回、DNA型鑑定された県内10地域に入っていない。古謝さんは今後対象地域が広がる可能性もあるとし「まだ終わっていない」と前を見据えた。

 父親の遺骨を見つけたいと申請していたうるま市の男性(80)宅にも、特定されなかったことを告げる文書が届いた。「可能性があればと思ったが、残念だ」と肩を落とす。「他にも県内で収集された遺骨がある。まだ見つかるかもしれないので、今後も鑑定をお願いできたらと思う」と話した。

 DNA型鑑定について国に要請を繰り返してきた沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さん(64)は、今回行われた歯だけでなく、四肢骨の鑑定作業を進めることや、より多くの遺族が申請できるよう、広報体制の強化が大切だと指摘する。「遺族は高齢化しており、時間との勝負になっている。国も県も、手を尽くしてほしい」と求めた。

 県平和援護・男女参画課の担当者は「県としては一人でも多く遺族の元へお返しすることができればと思っており、残りの鑑定結果を待ちたい」とした。