辺野古埋め立て 環境保全措置をとれば大丈夫じゃないの?


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、辺野古・大浦湾の自然環境や、国が実施する保全策の視点から埋め立て事業を考える。国と県の認識の違いや、これまで指摘された懸念事項を振り返る。

  大浦湾はどういう場所?

  辺野古から二見、大浦、瀬嵩、汀間、三原、安部までの約10キロに及ぶ海岸線で囲まれている。背後のやんばるの森から汀間川、大浦川、美謝川が大浦湾にそそいでいる。湾の水深が深いことから、県内でも特異な生物多様性を誇る海域だ。

 環境省は生物多様性条約に基づき重要海域に選定した。県は自然環境保全指針で厳正な保護が求められる最高レベルのランクIに位置付ける。

 大浦川の河口には干潟が広がり、本島で2番目に大きいマングローブが覆う地形だ。このような環境だからこそ、絶滅危惧種262種を含む5334種の生物が生息している。環境省によると、世界自然遺産の知床で確認される生物は1183種で、辺野古はそれを上回る。

  環境保全策の国と県の認識は?

  国は希少種を可能な限り移植するなどして「最大限配慮する」と強調する。一方、県は「不十分だ」と指摘し、両者の認識は異なる。

  環境保全策が妥当かどうかどうやって決めるの?

  沖縄防衛局は各分野の専門家でつくる環境監視等委員会を設置している。ただ委員会は防衛局の環境保全策に「指導・助言」する立場で、工事の方針そのものを決めることはできない。

 会合は非公開。その後公開される議事録では発言者は匿名。透明性や委員への責任の曖昧(あいまい)さなどから防衛局の追認機関だとの指摘もある。委員会の運営を受注した業者が複数の委員に寄付や役員報酬を送ったことも明らかになっている。副委員長を務めた故・東清二琉球大名誉教授は機能不全を訴え辞職した。

  これまで工事の問題はなかったの?

  護岸造成では沖縄防衛局は砕石を海に投入する際、造成場所を囲うように汚濁防止膜を設置した。ただ汚濁防止膜を固定する重りが海底の海草藻場を損傷させたり、汚濁防止膜から濁った水が漏れ出たりしたのが確認された。

  土砂投入の懸念事項は?

  埋め立て事業には2100万立方メートルの土砂を使う。そのうち8割に当たる1700万立方メートルは西日本6県から調達する予定。だが県外土砂には、繁殖力があり、沖縄固有の生物を脅かすアルゼンチンアリなど外来種の混入が懸念されている。防衛局は熱処理で死滅を検討しているが、全ての土砂を処理できるか方法が疑問視されている。

  生態系は大丈夫?

  ジュゴンやサンゴ、ウミガメなど希少生物を含め、影響が懸念される。防衛局は工事の影響を否定するが、実際、ジュゴンは工事開始後に生態の変化が起きている。

 辺野古・大浦湾や古宇利周辺で確認されていたジュゴン3頭のうち2頭の行方が分からなくなった。1頭は防衛局が海上にブイやフロートを設置した後の14年8月から姿を消した。2頭目は昨年9月から確認されていない。

 絶滅の恐れのあるアカウミガメやアオウミガメは埋め立てで消滅する米軍キャンプ・シュワブ内の砂浜に頻繁に上陸し、産卵している。防衛局は代わりの砂浜を整備するとしているが、湾の奥になるため有効性が疑問視されている。

 サンゴに関しては防衛局は深さが20メートル以内にある大きさが1メートル以上のサンゴや希少種のサンゴを移植するとしている。移植の条件が限定的であるほか、そもそもサンゴは移植してもその後の死亡率が高く、移植は保全策にならないとの見方もある。

 ジュゴンの餌でもあり、多くの生物を育む海草藻場に至っては、移植されず、土砂の生き埋めになっている状態だ。