芸能・文化

なぜ「泡沫候補」を取材するのか 新聞が伝えなかった沖縄県知事選あと2人の候補者

インタビューに答える宮原ジェフリーさん=16日、那覇市泉崎の琉球新報社

 奇抜な選挙ポスター、不思議な政見放送…。謎は多いのにマスコミではあまり取り上げられない―。そんな、政党や団体などの支援を受けずに沖縄県内の選挙に立候補し、当落の争いに入りにくい候補者に密着した「沖縄<泡沫候補>バトルロイヤル」(ボーダーインク社)が15日から発売された。なぜ彼らに注目したのか。著者で県内外の選挙を取材し続けてきた選挙ライターの宮原ジェフリーさん(35)=東京都=に話を聞いた。(聞き手・田吹遥子)

 ―宮原さんはこれまで県内外の選挙を取材し、選挙戦で当落線上になく、マスコミにあまり注目されない候補も取材している。

 「中学生の頃から20年以上、趣味として選挙を見てきた。その中で、もう1人出てるのに詳細な情報がなくて『誰だろうこの人?』と気になることがあって。インターネットの普及でそういう人たちの情報が出るようになったが、奇抜な選挙活動ばかりが注目された。彼らの主張が知りたくて直接会いに行くようになった。いろんな話が聞けて、熱い思いをリスペクトしたいと感じた」

 ―本では、9月の県知事選に出馬した兼島俊さんや渡口初美さんを中心に取り上げた。なぜ知事選でこの2人だったのか。

 「県知事選は自公とオール沖縄の構図で争点も分かりやすく、注目度が高い全県選挙だった。ただ、新聞などのマスコミでは(兼島さんと渡口さんの)2人の戦いについては伝えられていない。ちゃんと残していきたいと思った」

 ―2人の選挙戦は。

 「兼島さんはツイッターを中心に情報を発信した。渡口さんはベーシックインカムの考え方を県民に知ってほしいという思いが強かった。選挙では、兼島さんのポスターを貼るために他陣営の人がボランティアで動いたり、兼島さんと渡口さんの2人で政策や沖縄を語ったりということがあった」

 ―2人の半生まで掘り下げて紹介した。

 「年齢や所属、学歴、出身など、新聞に出ているプロフィルだけではなぜこの人が出馬したのか、どういう人なのか分からない。立候補者は所属で紹介されがちだが、それぞれにパーソナルヒストリーがある。人としてどういう背景で出馬したのかが理解できるといいだろうと思った」


ボーダインクから出版された「沖縄<泡沫候補>バトルロイヤル」

 ―新聞では伝えきれていない部分があると改めて感じた。既存のメディアの報道をどう思うか。

 「保革や自公対オール沖縄など、大きい組織の対立とはまた違う考え方があって、訴えている人がいる。その情報が入らない状況ではなくて、選挙の選択肢にあるんだという認識を持ってる状況であればいいと思う。『選挙ドットコム』では、4人の情報を均等に紹介した」

 「新聞には新聞のロジックがあって別のメディアだからカバーできる部分もあると思う。(2人のような候補の)主張を新聞に載せることができないかと思うところもあるが、そこは僕の立場で追っていく。それが注目を集めることでメディア側が考えるきっかけになったらいいと思う」

 ―本を通して伝えたいことは。

 「政治の話は仲間同士でも話をすることがはばかられる。関心がない人がいるのは当然。でもこういう面白い人たちがいるという視点から、どういう人なのかと背景を掘り下げていくことで政治に関心を持ってもらえれば書いたかいがあったなと思う」

 「今東京にいるが、沖縄で県民投票の話題が上がっても本土側では関心が薄い。沖縄の問題に関心を持つきっかけとしてこの本が機能したらいい。面白い話を理解するために沖縄が抱えている問題の認識につながればいいなと思う」

 「投票先を決める際には候補者の主張だけでなく『何を主張していないか』も大事になる。それはほかの候補者の主張と比較して知ることができる。投票する時の選択肢を増やすという意味でも(選挙の当落に関わらない候補の)情報は必要だと思う。次に選挙があった時もマスコミでは詳細に取り上げない候補がいるはず。選択肢を広げるという意味でもそういう候補の主張にも耳を傾けてほしい」

   ■    ■

 宮原ジェフリー(みやはら・じぇふりー)1983年東京都生まれ、琉球大学法文学部卒業、那覇市のNPO法人前島アートセンター事務局、武蔵野美術大学美術館職員などを経て、現在会社員として働く傍ら、ウェブメディア「選挙ドットコム」のライターとして選挙の記事を発信している。

沖縄<泡沫候補>バトルロイヤル (ボーダー新書)
宮原ジェフリー
ボーダーインク








  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス







  • 他のサービス